2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16580005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
力石 和英 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助手 (90220798)
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Keywords | コムギ / 穂発芽 / 種子休眠 / 突然変異体 / ABA |
Research Abstract |
本研究課題では、コムギの種子休眠および穂発芽に関する突然変異体を解析し、穂発芽に関わる要因を遺伝学的に解剖することを目的として、以下の研究を行った。 1.種子胚におけるα-amylase遺伝子の発現制御の解析:RSD系統における種子胚でのα-amylase遺伝子の発現は農林61号に比べて高かった。そこで、α-amylase遺伝子の制御に関与し、種子胚で特異的に発現する遺伝子であるPKABA1、TaVP1、TaABF及びTaAFPの発現を調査した。その結果、DAP30の種子胚におけるTaABFの発現が調査した全てのRSD系統で低下していた。また、一部の系統ではTaAFPの発現も低下しており、これら遺伝子の発現低下がα-amylase遺伝子の発現増加の原因であると考えられた。 2.Em遺伝子の発現制御:Em遺伝子は種子特異的発現マーカーとして利用されるABA誘導性遺伝子である。種子胚におけるEm遺伝子の発現は、DAP30の種子胚では全てのRSD系統で低下しており、RSD系統の種子胚ではABAシグナルの低下が生じていると考えられた。 3.ABA生合成に関わる遺伝子の発現解析:ABAの生合成に関わる酵素遺伝子の種子胚における発現はRSD系統間で異なっており、系統によりABA合成能力が異なる可能性が考えられた。 4.cDNAサブトラクションによる遺伝子発現の比較:農林61号とRSD32の種子胚における遺伝子発現の差をcDNAサブトラクションにより比較した結果、二つのクローン(sbtc49、sbtc63)において農林61号とRSD32の間で発現量に差が認められた。これらクローンの機能は不明であるが、両遺伝子の発現は全てのRSD系統で低下していることから、種子休眠性に関して重要な役割を果たしている可能性がある。 5.二次元電気泳動法による発現タンパク質の比較解析:農林61号及びRSD32の種子胚より抽出したタンパク質を二次元電気泳動法により解析した結果、両系統間には質的もしくは量的に異なる特性を有するスポットが複数存在した。このことから、RSD32における変異は複数の遺伝子の発現制御に関わる遺伝子に生じたものと考えられた。
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