2004 Fiscal Year Annual Research Report
イネ穎果の登熟優先度決定に関する遺伝的特性について
Project/Area Number |
16580008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 貞二 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (70155844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 雄佐 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (80122919)
中嶋 孝幸 東北大学, 農学部, 教務職員 (80241553)
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Keywords | イネ / 登熟優先度 / 弱勢 / source / sink比 / 穎果 / 初期成長 / アブシジン酸 / エチレン |
Research Abstract |
低source/sink比下で弱勢な穎果の初期成長が遅延し易く,登熟も悪化し易い「ササニシキ」と,遅延しにくく,登熟も悪化しにくい「92133」(中国江蘇省),すなわち登熟優先度決定に関する遺伝的特性が異なる2品種を用い,登熟期に50%の遮光を行い,初期成長期の穎果におけるアブシジン酸(ABA)を分析した.遮光により,「ササニシキ」の弱勢な穎果の発達初期段階のABA濃度が強勢な穎果の濃度よりも低くなったが,「92133」では強勢な穎果と同じ濃度を示した.外生ABAは弱勢な穎果の初期成長や登熟を促進することが明らかにされていることとあわせて考えると,低souce/sink比下における弱勢な穎果の初期生長遅延の品種間差はABA濃度の変化で説明できる可能性がある.今後,品種数を増やして分析していく予定である.なお,糖濃度も測定したが,品種間差を説明することはできなかった. 一方,一般にABAはエチレン発生を促すことが知られている.そこで,穎果の初期成長とエチレンの関係を,主に「ササニシキ」を用いて調査した.出穂後の穂を試験管内でインキュベーションし,エチレン発生を測定した結果,出穂後15日が最大となった.この時の一穂内の穎果の発達段階を調べると,穎果の幅が最大に達する直前の段階が最も多く,重回帰分析結果もこの段階でエチレンが最も多く発生することを示した.なお,この発達段階は,弱勢な穎果の成長が遅延し易い段階よりも後の段階である.さらに,種々の植物成長調節剤で穂からのエチレン発生を増減させても,穎果の初期成長は変化しなかった.また,インキュベーション時のACC処理により穂からのエチレン発生は明らかに増加したが,ABA処理では効果がなかった.したがってイネ穎果の初期成長の違いにはエチレンは関与せず,ABAが直接関与していると考えられた.
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