2004 Fiscal Year Annual Research Report
黄土高原からの土壌流出を抑えるスイッチグラスの機能解析と系統選拔
Project/Area Number |
16580010
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
一前 宣正 宇都宮大学, 野生植物科学研究センター, 教授 (50008067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 孝佳 宇都宮大学, 野生植物科学研究センター, 助手 (60302444)
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Keywords | switchgrass / 雑草利用 / 砂漠化防止 / 黄砂 / 中国 / 黄土高原 |
Research Abstract |
中国の黄土高原は数千年にわたる森林伐採、傾斜畑の造成、羊の過放牧に加えて、崩れ易い黄土の特性が相まって砂漠化が進行している。私たちは、この高原の緑化のため現地に導入した約2万種の雑草の中から、アメリカ合衆国原産で中国東北地方の雑草となっているswitchgrassだけが良く生育し、土壌の流失を抑えることを見出した。 本研究では、現地の冬期気温が-20℃以下、降雨が全く無いという厳しい環境条件に、この雑草がどのような機能を発揮して適応し、黄土の流失を抑えるのかについて検討した。 その結果、(1)switchgrassのライゾームはこれまで現地で緑化植物として評価されていたBromus inermisに比べて生存限界温度が低く、水分蒸発に伴う生存限界水分含有率の低いことが、低温と乾燥条件の厳しい現地に適応したと考えられる。(2)switchgrassによる黄土の流出防止効果がBromus inermisよりも大きい原因は、土壌緊縛力が約10倍大きく、一株根系分布域が約6倍大きいことと密接に関係していると考えられる。(3)Stipa bungeana(被度40.3%)とArtemisia spp.(42.8%)が優占し、埴被率101.9%の現地にswitchgrassを播種すると、4年後にはswitchgrass(被度53.4%),Stipa bungiana(27,8%)およびArtimisia spp.(25.9%)が優占し、植被率111.4%に変化した。従って、switchgrassは在来種との競合力の強いことが判明した。(4)switchgrassは形態的変異ならびに遺伝的変異の大きいことが判明した。今後、低温耐性と乾燥耐性の特性を具えた系統を選抜できる可能性が示唆された。
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