2005 Fiscal Year Annual Research Report
黄土高原からの土壌流出を抑えるスイッチグラスの機能解析と系統選拔
Project/Area Number |
16580010
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
一前 宣正 宇都宮大学, 野生植物科学研究センター, 教授 (50008067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 孝佳 宇都宮大学, 野生植物科学研究センター, 助教授 (60302444)
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Keywords | スイッチグラス / 黄土高原 / 土壌流出防止 / 黄砂防止 / 中国 |
Research Abstract |
荒廃した中国黄土高原において、過去15年間に導入した約1万7千種の雑草の中から、スイッチグラスだけが現地の斜面によく生育し、低温乾燥の冬期に耐え、土壌の流出を抑えることを見出した。本研究では以下のことを明らかにした。 1、黄土高原に適応し、土壌流出を抑えるスイッチグラスの生態的機能は次の通りである。 (1)低温耐性機能はライゾームにある。スイッチグラスのライゾームは典型的な寒地雑草であるシバムギと同程度の低温耐性を持ち、-20度に24時間置かれても生存できる特性を示した。 (2)乾燥耐性機能はライゾームにある。スイッチグラスのライゾームはシバムギよりも強く、-20度条件下において水分が50パーセント以下に低下しても生存できる特性を示した。 (3)土壌緊縛力機能は根系にある。スイッチグラスの根系は黄土高原に優占するイネ科のホクシハネガヤやキク科のヨモギ類に比べて、10倍以上の土壌緊縛力を持ち、その原因は太く、長く、数多い根系を持つことに起因した。 (4)競争力機能は比較的小さい。現地に優占するホクシハネガヤなどは、スイッチグラスと同じイネ科でスイッチグラスよりも草高が低いにもかかわらず、スイッチグラスに消滅させられることはない。なぜならば、スイッチグラスは多数の種子を生産し、翌年、土壌表面に落ちた種子から幼苗を生育させるが、冬期の低温と乾燥に耐えるだけのライゾームを形成出来ずに枯死し個体を増やすことが出来ない。これに対してホクシハネガヤなどの現地優占種は種子の先端に2本の長いのぎを持ち、空中湿度の変化を利用して土中2cm以下にもぐり込み、越冬できるという特性を具えている。そのため、スイッチグラスについては、人が土中2cm以下に播種した個体だけしか生存出来ず、自然条件下で在来種を駆逐することは出来ないと結論される。 2、スイッチグラスの低温および乾燥耐性を具えた系統選抜は次の通りである。 原産地のアメリカ合衆国と試験地である中国陝西省において形態的な特性および倍数性について調査、分類した。低温および乾燥耐性の系統については中国の試験地で数系統を得た。
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