2004 Fiscal Year Annual Research Report
マイコトキシン産生フザリウム属菌の染色体進化に関する分子細胞遺伝学的解析
Project/Area Number |
16580029
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
多賀 正節 岡山大学, 理学部, 助教授 (80236372)
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Keywords | 糸状菌 / 染色体 / 核型 / フザリウム / マイコトキシン / 細胞遺伝学 / FISH / ゲノム |
Research Abstract |
近年、マイコトキシン産生菌として世界的に注目されているムギ類赤かび病菌のFusarium graminearum(完全世代:Gibberella zeae)やF.culmorumのゲノムはフザリウム属菌のみならず全糸状菌の中でも特異的に染色体数が少なく(n=4),しかも各染色体は糸状菌の核型分析に用いられるパルスフィールゲル電気泳動法(PFGE)の分離能を超える約8Mbという極めて大きいサイズを有している。このような特異な核型が形成された機構として,我々は近縁種のゲノムの染色体が融合してn=4が形成されたという融合説を提唱し,本研究課題ではその実証を目指して研究している。今年度得た成果の概要は下記の通りである。 課題申請時には最新であった分子系統樹が,その後多数の菌種を加えて改訂された。したがって,当初予想していたn【greater than or equal】12から一挙にn=4が形成されたという考えを修正し,中間段階のステップを経ての融合様式を仮定する方が妥当であると考えた。そこで,オランダ,アメリカ,日本の菌株保存機関から多数の近縁種を導入し,それらの核型を顕微鏡とPFGEで解析した。その結果,n=8を有するF.avanaceum, F.Tricinctum, F.arthrosporioides, F.incarnatum, n=5のF.longipes, F.equisetiを見出し,分子系統樹と考え合わせて,融合は少なくともn【greater than or equal】12→n=8→n=5→n=4の過程を経たという結論を得た。それらの新規材料を加えてのFISHペインティング解析については,F.incarnatumのPFGEバンドからDNAを抽出し,ペインティング用プロープの作製の段階まで終了した。 F.graminearumのゲノムプロジェクトで作成されたcontig map上のcosmid cloneを用いてのPFGEサザン解析とFISHによるphysical mappingについては,米国とめ間で染色体と対応させた完全contig作成に関する共同研究を実施中であり,融合仮説の解析対象とする最初の染色体としてrDNAを持つ第4染色体を選択した。現在,選択したcosmid cloneのプローブ化を実施中である。
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