2004 Fiscal Year Annual Research Report
農薬分解細菌をモデルとした環境常在細菌ゲノムの遺伝的動態と構成原理に関する研究
Project/Area Number |
16580050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永田 裕二 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (30237531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 雅孝 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (90172022)
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Keywords | 環境汚染物質 / hexachlorocyclohexane / Sphingomonas / ゲノム / 水平伝達 / 接合伝達性プラスミド / 有機塩素系農薬 / 環境適応 |
Research Abstract |
環境変動に対する細菌のゲノム再編成を伴う適応進化機構は生物学上の大きな興味のひとつである。人間が化学工業で作り出した様々な化学物質に対する分解能の獲得という細菌の適応機構もこのような観点から捉えることが出来る。本研究では、環境常在細菌の迅速な新規能力獲得機構の解明を最終的な目標とし、高度に難分解性の人工化合物である有機塩素系農薬gamma-hexachlorocyclohexane(HCH)を分解資化するグラム陰性細菌Sphingomonas paucimobilis UT26株のゲノムの構成原理、およびゲノム動態の機構の解明を進めている。 本年度は、まず、バルスフィールドゲル電気泳動法を用いて本菌株ゲノムの物理的地図を作製し、UT26のゲノムが、3.6Mbと660kbのrRNA遺伝子が存在する2種の染色体(Chr.I,Chr.IIと命名)と、185kbのプラスミド(pCHQ1と命名)から構成されることを明らかにした。染色体の複製開始に必須なdnaA遺伝子はChr.Iに存在し、本レプリコンが主染色体であると考えられた。さらに、HCH分解代謝に必要な遺伝子群linA,linB,linCはChr.Iに、linREDオペロンはpCHQ1に、linFはChr.IIにそれぞれ存在することを確認した。また、linB,linREDオペロン、およびlinFの各レプリコン上の位置は同定できたが、linA,linCのChr.I上の詳細な位置は決定できなかった。原因として、linA,linCが存在する染色体領域の構造的不安定性が考えられた。 一方、linA,linB遺伝子、およびlinREDオペロンをそれぞれ薬剤耐性遺伝子でマーキングし、他のSphingomonas属の細菌株への接合伝達実験を実施したところ、linREDオペロンのみの水平伝達が低頻度ながら認められた。接合伝達体はpCHQ1を保持しており、本プラスミドが接合伝達性であることが明らかになった。 また、HCH代謝に関わる変異株の解析の過程で、内在性の転移因子ISsp1を同定した。本ISがUT26ゲノムの再編成に関与している可能性も考えられた。
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Research Products
(6 results)