2005 Fiscal Year Annual Research Report
熱分解制御によるセルロース系バイオマスの低分子有用ケミカルスへの変換
Project/Area Number |
16580132
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教授 (80224864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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Keywords | バイオマス / セルロース / 熱分解 / 低分子ケミカルス / 熱分解制御 / 反応機構 / 再生可能資源 / 持続可能社会 |
Research Abstract |
平成16年度の研究の成果の1つとして、セルロースの1次熱分解物であるレボグルコサンとホウ酸あるいはホウ酸誘導体が熱分解条件下で熱に安定は複合体を形成することが見出された。本成果は、セルロース系バイオマスの熱分解制御による低分子有用ケミカルスへの変換研究において、副反応をできるだけ抑制した変換を可能にする重要な成果である。本年度は、レボグルコサン-ホウ酸複合体の化学構造の解析、セルロースに対するホウ酸の作用について主に検討し、以下の成果を得た。 レボグルコサン-ホウ酸複合体は、水などの求核試薬の存在下で不安定であり、単離することはできなかった。しかしながら、反応溶液そのもののNMR分析の結果および(1)水の添加により定量的にグルコースを与えたこと、(2)レボグルコサン:ホウ酸=1:2の生成物であること、(3)レボグルコサンの1-6環の開裂が律速段階であること、(4)ホウ酸元素はSP3軌道を持つこと(B-NMR測定)などにより、その化学構造としてC1-OH-C3-OH間およびC2-OH-C4-OH間でそれぞれ2重のホウ酸エステルを形成した化学構造が提案された。 セルロースの熱分解におけるホウ酸の添加効果については、スルホラン中での熱分解で、1次熱分解物であるレボグルコサンが生成すると同時にホウ酸との複合体が形成されれば、高効率なセルロースの単糖への変換が可能になると考えられたが、レボグルコサンの場合とは異なり、セルロースでは、ホウ酸を添加することでトランスグリコシレーションによる開重合が抑制され、硫酸触媒存在下においてもセルロースはほぼ未反応のまま回収されることが見出された。さらに、セロオリゴ糖(1-6量体)をモデル化合物として用い、同様な条件下でホウ酸の添加効果を調べたところ、1および2量体はレボグルコサンと同様に熱に安定なホウ酸との複合体を形成したが、3量体以上の誘導体では、セルロースと同様に、開重合が進行することなく未反応のまま回収されることがわかった。これらの結果より、ホウ酸のセルロースおよび単糖、オリゴ糖への作用機構が提案された。
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Research Products
(3 results)