Research Abstract |
リグニン分解酵素は特有な分解システムを有しており,反応の多様性と強い酸化力により,リグニンのみならず,様々な有害物質をも分解可能であることが明らかとなってきた.これまでに,特定の有害物質,例えば,PCBやダイオキシンを分解する陸上由来の微生物は多く見出されており,その微生物を用いたバイオレメディエーションが実施されているが,海洋環境での実施例は皆無である.また,これまでに報告されている海洋環境由来のリグニン分解微生物の報告例は1例のみである.地球全表面積の約70%を占める海洋は,高塩分,低温,貧栄養など,多くの点で陸上環境とは性質を異にしており,その環境に適する特異な分解微生物の取得が期待できる.それ故,陸上由来のリグニン分解微生物とは異なる新規な微生物を分離できる可能性も極めて大きいと思われる.昨年行った研究では,奄美大島の湿地帯から採取した流木より分離した微生物に強いリグニン分解酵素活性が認められ,リグニン分解酵素のうち,ラッカーゼを産生する微生物であることを明らかとした.また,本歯の代表的な生理・生化学的性状試験を行った結果,生育可能温度領域4-37℃,pH 2-11,NaCl濃度0-12%の範囲で生育可能な耐塩性を有する糸状菌であった.また,NaCl濃度5%までは,ラッカーゼの産生が観察されたため,海洋環境でのバイオレメディエーションに適する微生物であることが示唆された.ラッカーゼを産生する最適培養条件下,TBT, TPTを0.1ppm添加した揚合に,約1週間で両物質はほぼ完全に分解した.さらに,汎用性の高い色素染料9種についてその脱色を検討した結果,リアクティブ色素を培養1日目で50%以上脱色することを確認した.
|