2005 Fiscal Year Annual Research Report
魚類体表粘液に見出されたグラム陰性菌特異性抗菌タンパク質の構造と作用機構の解明
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16580167
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
長島 裕二 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (40180484)
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Keywords | 抗菌タンパク質 / クロソイ / 体表粘液 / L-アミノ酸オキシダーゼ / 過酸化水素 / グラム陰性菌 / 抗菌作用 / 電子顕微鏡観察 |
Research Abstract |
魚類体表粘液は様々な生理活性を示し,抗菌ペプチド・タンパク質は微生物に対する生体防御因子として重要な働きをしている。申請者らはクロソイ体表粘液から,グラム陰性菌に特異的に作用する抗菌タンパク質を見出した。昨年度,クロソイ抗菌タンパク質(以下SSAPと称す)の一次構造を決定し,SSAPはL-アミノ酸オキシダーゼ(LAO)と相同性を示すことを明らかにした。そこで今年度は,SSAPのLAO作用ならびに抗菌作用機構の解明を行った。SSAPのLAO作用は基質特異性がきわめて高いのが特徴で,基質にL-リシンしか認識しなかった。L-リシンに対するミカエリス定数、Kmは0.19mM,比活性10.2unit/mg,代謝回転数Kcat20.4s^<-1>と算出された。抗菌スペクトル測定の結果,グラム陰性菌にのみ作用しAeromonas salmonicidaに最も強力に作用し,最小発育阻止濃度は0.075μg/mlだった。しかし,カタラーゼ添加により抗菌活性が失われたことから,SSAPの抗菌作用は過酸化水素によることがわかった。そこで,SSAPと過酸化水素を用いて細菌に対する作用を調べたところ,両者の抗菌作用はほぼ一致し,A. salmonicidaとVibrio parahaemolyticusには殺菌的に,Photobacterium damselae subsp. piscicidaには静菌的に作用し,菌によって抗菌作用が異なることを明らかにした。抗菌処理した上記3種菌体についてそれらの形態を電子顕微鏡で観察したところ,前2者は菌体表面に著しい損傷が,後者は菌の伸長がみられ,抗菌作用測定の結果を確認した。SSAPはグラム陰性菌,とくに魚病菌に選択的に作用することが特徴であるが,SSAPの菌選択性については今後の課題となった。
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