Research Abstract |
(実施内容) フィールドを中心に情報収集を行った。調査地としては,30年にわたって有機農業の実践が継続されている大阪府岸和田市塔原地区,地域資源循環事例として江戸時代からの実績が確認されている埼玉県近隣の三富地区などに対象を拡大し,土着の堆肥技術を揉索した。各地域における利用可能な自然有機物や産業残渣,堆肥化施設の条件,良好な堆肥化に要する日数,現場のネットワークの広がりに関する聞き取りなどを行った。 (成果) 三重県を中心に各地で自生的に取り組まれている生ごみ堆肥化活動は,廃棄物の肥料化ルートの目詰まり問題の解決に対して,排出元の関与による悪臭の発生抑制,堆肥の質の確保による利用先の確保,という重要な示唆を与えるものである。さらに,この質確保という制約が,かえって生ごみリサイクル参加者の意欲を高め,結果として活動を広げていること,堆肥化プロセスを各家庭に分散させることで大規模施設を必要としない処理を実現していること,その結果として低コストのシステムを構築し得ており,堆肥技術の集積と普及が重要な要素となっていることを明らかにした。 循環型社会を多様なサブシステムから構築するために必要なものは,大規模施設による生ごみ堆肥化のシステムではなく,小さな技術による分散的な取り組みであり,住民主体の地域内発的な取り組みの定着である。したがって,現段階において求められるものは,拙速な生ごみリサイクル率の向上ではなく,各家庭における生ごみ堆肥化活動への参画の誘導と持続性の確保である。 生ごみ堆肥化というシステムを循環型社会に円滑に組み込み,定着させるには堆肥技術の実践と普及が必要である。各地における生ごみ堆肥化の取り粗みは,住民自身による生ごみの処理活動,地域資源循環活動,内発的地域活性化活動として評価されるだけでなく,今後の地域社会に求められるソーシャルガバナンスを展望できるものである。
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