2006 Fiscal Year Annual Research Report
効率的かつ公正な水資源配分における農民管理組合の役割-南インドの事例
Project/Area Number |
16580193
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
梅津 千惠子 総合地球環境学研究所, 研究部, 助教授 (40294251)
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Keywords | 経済政策 / 農業経済 / 環境変動 / 貧困 / インド / 水管理 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
現在アジアの低所得国では約90%の水資源が農業生産に使われている。利用可能な水資源の減少は食糧生産を厳しく制限し、特に低所得国での食糧安全保障を脅かしている。近年、需要サイドのアプローチとして、水管理組合が効率的かつ公正な水管理に果たす役割の重要性が再認識されている。インドでは特に貧困層の農民は溜池灌漑の様な伝統的灌漑システムに依存している。溜池灌漑に依存する農民は小規模の自給的農民であり、大規模灌漑プロジェクトに焦点を合わせる政策決定者からいつも疎外されて来た。例えば、南インドのTamilnadu州では約39,000個所の溜池灌漑システムがあり、約60-100年の歴史がある。総灌漑面積の約3分の1である約100万ヘクタールの農地が溜池灌漑により水の供給を受けている。1947年以来、特に1960年以降の近代的灌漑システムの急速な発達により溜池灌:概の機能は徐々に低下し、水の供給は2000年には60%に落ち込んだ。不確実な水の供給と灌漑システムの荒廃により、近年伝統的溜池灌漑の機能を強化することが勧告されている。 この研究では水管理組合が効率的かつ公正な水管理に果たす役割を分析した。具体的には、1)南インド・タミルナドゥの伝統的溜池灌漑の管理システムを研究し、水利用効率の向上に示唆を与える。2)環境資源管理が貧困削減へ果たす役割を考察し、地域の水資源管理に示唆を与える。上記の目的を達成するために、タミルナドゥ農業大学・水資源技術センターの協力を得て水管理組合の研究を実施した。主に溜池灌漑の水管理組織および農民に対する聞き取り調査を行なった。具体的な研究内容は以下の通りである。1.文献調査(制度分析)、2.フィールド調査(水管理組合及び農家に対する質問表)、3.水管理組合の効率性分析、4.農家の行動分析、すなわちどの要因が農家の水管理組合に対する貢献に影響を与えているのか。以上の分析から水資源管理の向上のための農民組織、制度に対する政策的示唆を提示した。得に旱魃時における対応では、対応能力に社会経済的地位による差異が見られた。
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