Research Abstract |
1.多種類パッチの選択 草地に,再成長期間と施肥量の異なる9種類のパッチを創出し,放牧牛によるパッチ選択を調査した。放牧牛は,パッチへの訪問とパッチでの滞在の2段階の選択過程を通して,多種類のパッチ条件下でも好みのパッチを選択する能力を備えていることが明らかになった。 2.パッチスケールでの採餌戦略のメカニズムのモデル化と質的報酬の解明 パッチスケールでの採餌戦略(パッチ選択)のメカニズムをモデル化した。モデルでは,まず,パッチ植生の量的・質的特徴に関わる変数の値が動物にとっての価値に変換され,次に,異なる変数に基づく動物にとっての価値が相互に比較できる形に変換・統合された結果としてパッチの総合価値が決定され,最後に,パッチの総合価値に基づいて動物がパッチを選択する。モデルの概念にもとづき,9パッチ試験(平成19年度)からのデータを用いて,パッチの総合価値の実際の計算過程を決定した。さらに,4パッチ試験(平成17年度)および6パッチ試験(平成18年度)からのデータを用いてモデルを検証した。この結果,作成されたモデルは放牧牛によるパッチスケールでの採餌戦略(パッチ選択)を予測することができると判断された。また,パッチ選択の質的報酬は粗タンパク質含量であるとみなされた。 3.その他 採食地点の選択・利用は,パッチよりも空間スケールが小さくなると,植生価値(量,質,種構成など)では十分に説明できなくなったことから,小空間スケールでの採食地点の選択には,植生価値の他に,非植生価値(放牧施設,地形など),動物の認識能力・探査習性,社会的関係,選択ミスなどが関与している可能性が示唆された。また,暖地型イネ科2草種のパッチに対する放牧牛の選択において,上述と同様に,粗タンパク質含量をパッチ選択の1つの報酬として特定した。
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