Research Abstract |
【目的】南九州で多年利用可能と予想される矮性ネピアグラス(Dwarf-late;以下DL)の地域適応性を,異なる5地点での造成初年度に検討し,宮崎市では牧養力と飼料品質も検討した。 【材料と方法】試験地の概要は,5aのDL放牧区を,宮崎県宮崎市では2002年と2004年の5月上旬に各々4区と2区,熊本県水俣市,合志町,五和町では2003年5月中下旬に各1区,長崎県有明町では2004年5月下旬に1区を栄養繁殖で造成した。各地点の造成後初回剪葉時の成長量,輪換放牧体系,翌春の越冬性等を測定し,宮崎市では,地表面から10cm高で刈取った飼料草の葉身と茎のin vitro乾物消化率(IVDMD)と粗タンパク質(CP)含量を測定した。 【結果】植付け後73〜108日目の初回剪葉開始時の茎数,草量,葉面積指数などに,除草時期の早晩に伴う変異があったが,南九州では植付け後約80〜90日後に放牧・採草利用が開始でき,造成年に2〜3回の利用が可能であった。造成初年度の越冬率は,宮崎市,水俣市および五和町では各々95,96,93%と高く十分多年利用可能と考えられたが,合志町では17%で低かった。これは越冬期間の最低温度の極値と零下日数が,合志町では-7.3℃,72日であったが,その他3地点では各々-3.0℃以上,20日以内であり,DLが南九州で多年利用可能な気象条件が示唆された。宮崎市の輪換放牧では5aのDL草地を6区造成し,肉用繁殖育成牛(放牧開始時平均で276kg)3頭を,6月下旬〜10月下旬の約4ヶ月間放牧利用でき,この全期間および7月上旬〜10月上旬の日増体量が,各々0.43kg/日,0.57kg/日と算出された。2002年と2003年のDL草地の飼料品質は,両年の年間平均のIVDMDとCP含量で,各々62.3〜65.2%と9.9%であり,暖地型イネ科牧草の平均値(約54%と9.3%)に比べ高かった。造成初年目のDL被食量は,2年目以降に比べ低いが,暖地型牧草として十分高い牧養力を有すると示唆された。
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