Research Abstract |
ウシヘルペスウイルス4型(BHV-4)はカポシ肉腫ウイルス同様,ガンマヘルペスウイルスに属し,呼吸器疾患や生殖器疾患を引き起こす.また,他のヘルペスウイルスと同様,細胞に持続感染し,様々な刺激によってウイルスの再活性化が起こる.しかしどのようにウイルスが宿主免疫系を回避して持続感染でき,また,再活性化できるのかということは明らかでない.申請者はコンピューターによる蛋白質ドメイン解析を行った結果,BHV-4のもつBo-4およびBo-5蛋白質が典型的なPHD配列(Zinc finger蛋白質の機能ドメインのひとつとして知られる配列)を有することを見出した.PHDドメインの生化学的機能は長い間不明であったが,最近,カポシ肉腫ウイルスのMIR1,MIR2蛋白質(共にPHDドメインを有する)がMHCクラス1やB7.2分子をライソゾーム系や小胞体へ輸送し,ユビキチン・プロテアソーム系依存性に選択的分解することで,ウイルスの宿主免疫系回避機構に携わっていることがわかった. ユビキチンシステムは、E1,E2,E3より構成される.このうち、標的蛋白質を認識し,特異的にユビキチンを結合させる反応を触媒する酵素E3リガーゼが最も重要である.申請者はBHV-4のBo-4およびBo-5蛋白質がE3リガーゼであると予測し,それら遺伝子をクローニングした.Bo-4およびBo-5遺伝子を細胞に導入し,細胞で蛋白質を発現させると,特にBo4蛋白質の安定性が悪くウエスタンブロティング法によってほとんど検出が不可能であった.このため,Bo4またはBo5遺伝子とGFP遺伝子とのキメラ遺伝子を合成し細胞で発現させたところ,蛋白質が安定に発現することがわかった.また,プロテアソーム阻害剤であるMG132存在下で蛋白質を発現させるとBo-4あるいはBo-5依存性に細胞内蛋白質のユビキチン化およびBo-4あるいはBo-5蛋白質自身のユビキチン化が起こった.Bo-4およびBo-5遺伝子のRINGドメインや他の領域を欠失させると逆に蛋白質の安定性が増した. 今後,細胞内の標的基質蛋白質の同定とその生理活性を解析するとともにウイルス感染による病原性との関連を明らかにしていく必要性がある.
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