2005 Fiscal Year Annual Research Report
カンピロバクターのバイオフィルム形成機構とその生物学的機能に関する研究
Project/Area Number |
16580250
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
三澤 尚明 宮崎大学, 農学部, 助教授 (20229678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 憲一 秋田大学, バイオサイエンス教育・研究センター, 助教授 (40113766)
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Keywords | カンピロバクター / バイオフィルム / 生存性 / 食中毒 / 多糖体 |
Research Abstract |
1.研究の目的:バイオフィルム(BF)とは、菌体外に放出される粘液性物質によって菌が集合体を形成することによりできる生物膜である。我々はCampylobacter jejuniがBFを形成することを観察し、運動性がBF形成に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。しかしながら本菌のBFの生物学的な意義や構成成分などは明らかにされていない。そこで本研究では、BF形成能を欠いた変異株を用い、BFの性状や機能について調べた。 2.方法:C.jejuni81-176株からmotA遺伝子をノックアウトした変異株を作出した。集合体ではないplanktonic菌は、野生株のBFをピペッティング処理によって調整した。機能解析は、パルプディスク上での乾燥抵抗性試験、加熱低抗性試験、消毒剤に対する抵抗性試験、抗生物質に対する感受性試験について調べた。また、野生株のBFを用いて、トリプシン、プロテナーゼK、リパーゼの酵素処理によってBF形成阻害の程度を調べた。さらに、野生株、motAおよび莢膜多糖を欠損したkpsM変異株をプロテナーゼKで処理した後、SDS・PAGEを行い、銀、アルシアンブルー、PAS、ルテニウムレッドの各染色法を行った。 3.結果及び考察:C.jejuniのBFは、実施した物理化学的処理に対してBF形成能を欠いた変異株やplanktonicな状態に比べ低抗性を示した。またBFはリパーゼ処理で形成阻害がみられることから、BF形成には脂質が関与していると考えられた。糖を検出する種々の染色法を行ったが、高分子量の成分は検出されなかった。一方、リポオリゴ糖とは異なる低分子領域部位に各染色法で染まるバンドが認められた。以上の結果から、C.jejuniのBFの構成成分を明らかにすることはできなかったが、集合体を形成することで環境中における生残性や薬剤抵抗性に重要な役割を持つことが示唆された。
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