2005 Fiscal Year Annual Research Report
漁港と沿岸海域における腸炎ビブリオの汚染レベルの変動要因に関する分子疫学的研究
Project/Area Number |
16580252
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
熊澤 教眞 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (00039926)
|
Keywords | 腸炎ビブリオ / デロビブリオ / 潮汐 / 降雨 / 腸炎ビブリオ食中毒 / 汽水域 / イワガキ / アジ |
Research Abstract |
1.腸炎ビブリオを宿主とするデロビブリオ類似菌の分布と潮汐・降雨との関係 高知県室戸市の室津川とこれに隣接する室津漁港、島根県松江市の佐陀川汽水域と河口内に位置する恵曇漁港で腸炎ビブリオを宿主とするデロビブリオ類似菌(BALO)の分布と潮汐・降雨との関係を調べた。室津川汽水域に蓄積した腸炎ビブリオとBALOは降雨により河口から流出し、隣接する室津漁港に流入したが、降雨後10日以内に汽水域の菌数が回復した。佐陀川汽水域には塩分濃度35‰で増殖するBALOと塩分濃度5‰で増殖するBALOが分布しており、前者は下流部に多く、後者は上流部に多いこと、汽水域では腸炎ビブリオの菌数とBALOの菌数の間に弱い逆相関が見られたが沿岸海域では両者の間に相関が見られなかった。このことから、BALOは汽水域における腸炎ビブリオの菌数を支配するおもな要因であるが、沿岸海域ではBALOが腸炎ビブリオの分布を支配しているとは言えないと考えられる。 2.豪雨による汽水域からの腸炎ビブリオの流出と食中毒発生 「平成16年7月新潟・福島豪雨」から2週間後の7月27日に新潟市沖で捕獲して新潟港に水揚げした5尾のアジから23〜240/gの腸炎ビブリオが検出された。豪雨の前に水揚げしたアジからは本菌は検出されなかった。このことは、豪雨で増水した阿賀野川或いは信濃川から流出した菌がアジを汚染したことを示唆している。一方、この豪雨で荒川が増水した7〜14日後に新潟県北部の4市町村で血清型O3:K6の耐熱性溶血毒産生菌によるイワガキとイガイを原因食品とする腸炎ビブリオ食中毒が多発した。これらの貝類は汽水域から流出した腸炎ビブリオの汚染を受けていたと推定される。汽水域における耐熱性溶血毒産生菌の増殖と豪雨による水位上昇を監視するシステムを構築すれば、高い確率で本食中毒の発生が予測できるであろう。
|
Research Products
(1 results)