2004 Fiscal Year Annual Research Report
酸性雪による越冬性植物の傷害発生機構の解明と耐性付与のための分子基盤の構築
Project/Area Number |
16580270
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒川 圭太 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (00241381)
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Keywords | 酸性雪ストレス / 凍結傷害 / 冬小麦 |
Research Abstract |
本研究は、酸性凍結ストレス耐性付与のための分子基盤を構築するため、越冬性の高い栽培作物の冬小麦(Triticum aestivum L.)を用い、酸性雪ストレスによる傷害発生機構を解明することが主目的である。今年度は、酸性雪ストレスのシミュレーション実験系を構築して酸性雪ストレスに対する冬小麦緑葉の傷害発生様式を解析した。 積雪地域における越冬性植物の酸性雪ストレスに対する感受性評価や応答性の解析のために、酸性雪ストレスを簡便にシミュレーションする三種類の実験系を構築した。すなわち、積雪期(長期凍結法)と降雪・融雪期(平衡凍結法、繰返し凍結融解法)に対応する実験系である。平衡凍結法にて酸性雪ストレスの影響を調べたところ、冬小麦緑葉組織では硫酸溶液(pH2.0)存在下で凍結融解すると、純水(pH5.6)を用いた対照区に比べて-8℃での生存率は30%以上も低下することが明らかになった。さらに、長期凍結法では、酸性条件下での凍結処理が冬小麦緑葉に及ぼす影響について、-4℃にて7日間ならびに28日間の凍結処理をおこなって検証した。pH3.0やpH4.0の硫酸溶液を用いた場合、両者の間で生存率の変化に差異は見られなかったものの、いずれも純水を用いた対照区に比べてわずかながらに生存率が低下する傾向にあった。また、pH2.0の酸性条件ではpH3.0やpH4.0の場合に比べて生存率の低下がさらに助長され、処理後7日目の生存率は対照区よりも30%近く低下し、28日目では50%近くも低下していた。平衡凍結法ならびに長期凍結法の対照実験として、植氷せずに過冷却状態を維持して冷却した実験もおこなったが、いずれも生存率の低下は小さかったため、緑葉組織を酸性条件下で細胞外凍結・融解することが傷害発生を助長することが明らかになった。本成果については投稿準備中である。
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Research Products
(4 results)