Research Abstract |
DNA、RNAおよびタンパク質の特定配列や特定構造を認識切断する試薬の開発は新たな抗ガン剤、人工遺伝子治療剤への適用ができると期待される。 本研究では、キラルな構造を持つDNAは他の分子のキラリティーを認識することから、光学活性なジアミンから誘導される複核および多核鉄錯体を合成し、特定の配列部位をもつ遺伝子を認識し切断する人工制限酵素の開発を行い、染色体DNAの機能制御を目指す。 本年度はまず、3種類の光学活性複核配位子1,8-(N-anthranylmethyl)-bis(N',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamine=R-ADCD), 1,3-(N-xylylmethyl)-bis(N',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamine=1,3-R-XDCD), 1,4-(N-xylylmethyl)-bis-(N',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamine=1,4-R-XDCD)を合成した。 次に過剰のアスコルビン酸ナトリウム存在下,R-ADCDを用いFeSO_4・7H_2Oとから調製した鉄錯体によるプラスミドpUC19 DNA切断反応について検討した。鉄錯体の調製ならびにDNA切断反応は全て好気的条件下で行った。単核の(N',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamine=R-DCA)鉄錯体との比較から複核化に伴いDNA切断能が向上することがわかった。さらに254 base pairフラクメントを用いて塩基配列特異性について検討した結果、R-ADCD鉄錯体はAT-richな部位をよく切断していることがわかった。R-ADCD鉄錯体によるDAN切断の機構については検討中である。 また,新規光学活性配位子N,N,N'-tris(2-pyridylmethyl)-S-2-(aminomethyl)piperidine=S-P3pipdaを合成し、そのCu(II)、Ni(II)錯体の分光、電気および構造学的特徴づけを行った。X線結晶構造解析から両錯体は正八面体構造であることがわかった。Ni(II)錯体の電気学的性質を検討したところ+1.50,-1.60V vs Ag/Ag^+にそれぞれNi^<III/II>,Ni^<II/I>カップルに対応する二つの可逆な酸化還元波が観測され、高原子並びに低原子価を電気化学的に安定化することを明らかにした。
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