2004 Fiscal Year Annual Research Report
数理モデルと生物試験を併用したダイオキシンの人健康リスク評価
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16590102
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
丸山 若重 独立行政法人国立環境研究所, 化学物質環境リスク研究センター, 研究員 (40353544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 康展 独立行政法人国立環境研究所, 化学物質環境リスク研究センター, 室長 (20159297)
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Keywords | ダイオキシン / PBPKモデル / 健康リスク評価 / GSTP positive foci / 乳児・小児のリスク |
Research Abstract |
本年度の実績は、人体内でのダイオキシン濃度推定のモデルを整備したことと、ラットでのダイオキシンによる腫瘍プロモーション活性の定量化実験を行ったことである。人でのダイオキシンの体内動態モデルは、動物実験から得られたダイオキシンの毒性影響を、人への毒性へと定量的に外挿する途中で、毒性発現の標的臓器への蓄積を予測するために用いる重要なモデルである。本年度は、主に母乳由来の高濃度ダイオキシン摂取による乳児体内濃度の推定と、小児への影響予測を目的とした。食餌由来の小児体内濃度予測に主眼をおいた。母乳摂取による乳児のダイオキシン摂取量は一過性に成人の50-60倍(体重1kgあたり)になる計算であったが、その結果の体内濃度は、成人と比較して必ずしも50-60倍の高濃度とはならなかった。これは、母乳の摂取量が生後約1ヶ月をピークに減少に転じること、母乳中のダイオキシン濃度が授乳期間を通じて減少し続けること、乳児の成長が早く、生後1年いないに体重にして約2.5から2.7倍に増加することなどの複合的影響によるものと考えられる。日本人の母乳中ダイオキシン濃度と、母乳摂取量、離乳食由来のダイオキシン摂取などから予測した乳児の平均的な濃度は、肝臓と脂肪に関しては、成人の濃度範囲の中に収まっていた。よって体内濃度の観点のみから判断すると、乳児は成人に比べて著しく危険というわけではないことがわかった。 一方、腫瘍プロモーション活性の定量化実験の目的は、ダイオキシンの毒性を動物から人への種間外挿する際のパラメータ取得と、同時にダイオキシンの同族体の活性比較のためである。腫瘍プロモーション活性の測定は次の方法で行った。(1)ラットにがんイニシエータとしてジエチルニトロソアミン(DES)を投与し、2週間の回復期間の後、ダイオキシンの経口・反復投与を開始する。(2)DES投与3週間目にラット肝臓の部分切除を行う。この切除した残りから肝臓が再生してくる段階で、DESにより障害をうけた細胞ががんの前段階の結節を形成し、ダイオキシンはこの結節の生成を促進する。(3)結節は検出マーカーであるGSTP (glutathione-S-transferase P)を用いた免疫染色により検出し、結節(GSTP positive foci)の面積を定量することによって、間接的にダイオキシンの腫瘍プロモーション活性を数値化する。この方法により、日本人の1日摂取量として毒性寄与の大きい3つのダイオキシン同族体(2378-TCDD,12378-PeCDD,23478-PeCDF)の相互の活性比較を行った。また、ラット肝臓中のダイオキシン濃度も測定しており、濃度と活性の関係から、現在、新たな毒性換算係数(TEF)を計算中である。
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Research Products
(1 results)