2005 Fiscal Year Annual Research Report
再生医療を目指した基礎的研究:正常ヒト胎児肝細胞の分化と薬物動態試験への応用
Project/Area Number |
16590109
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松永 民秀 信州大学, 医学部附属病院, 助教授 (40209581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 栄 信州大学, 医学部附属病院, 教授 (70169069)
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Keywords | 正常ヒト胎児肝細胞 / シトクロムP450 / オンコスタチンM / グルココルチコイド受容 / CYP3A4 / CYP3A7 / メチル化 / サイトケラチン7 |
Research Abstract |
肝細胞の分化と成熟に関与することが知られているオンコスタチンM(OSM)とデキサメタゾン(DEX)存在下、正常ヒト胎児肝細胞(HFL細胞)を培養した。その結果、両物質の併用により細胞内に空胞様小器官が形成され、顕著な形態変化が生じることを見出した。本小器官は、LAMP-2およびLGP-85抗体にて染色されたことから、後期エンドソーム/ライソゾームが巨大化した可能性が示唆された。また、DEXによりシトクロムP450 3A4(CYP3A4)およびCYP3A7が顕著に誘導されたが、OSMの併用により完全に抑制された。グルココルチコイド受容体(GR)のmRNAの発現がOSMにより抑制されたことから、OSMによるCYP3A分子種の誘導抑制はGRの発現抑制に起因することが推察された。一方、DEXによるCYP3A分子種の誘導はRNAiによるGR mRNAのノックダウンにより顕著に抑制されたことから、CYP3A分子種のDEXによる誘導にGRが直接関与していることを明らかにした。HFL細胞では成人の肝細胞とは異なりリファンピシン(RIF)によるCYP3A分子種の誘導は全く認められなかった。その原因としてHFL細胞にはRIFによる誘導に関与するプレグナンX受容体(PXR)が発現していないことが考えられた。そこで、ヒトPXRを遺伝子導入にて過剰発現した場合の影響について検討したところ、予想に反してCYP3Aの誘導は認められなかった。しかし、HFL細胞をDNAのメチル化阻害剤で処理することによりRIFによりCYP3Aが誘導されたことから、発現調節にDNAのメチル化が関与している可能性が示唆された。また、HFL細胞を免疫不全動物の皮下に移植した場合、移植部位に細胞隗の形成が認められた。RT-PCR解析により、移植時と比較し成人肝細胞に多く発現するCYP3A4の発現が増加し、胎児肝細胞に特異的であるα-フェトプロテインは減少していたことから、肝細胞の成熟が推察された。なお、背部皮下に形成された細胞隗は、胆管上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン7(CK7)の抗体にて、上皮様の管状構造を有する細胞が染色された。一方、門脈より肝臓に移植した場合、胆管上皮細胞以外に実質肝細胞が検出されたことから、移植部位により分化が異なることが示唆された。
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