2005 Fiscal Year Annual Research Report
最初期発現遺伝子Arcを用いたフェロモンの受容機構と記憶機構の解析
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16590138
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松岡 勝人 新潟大学, 医歯学系, 助手 (40323969)
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Keywords | 鋤鼻系 / 副嗅球 / シナプス / マウス / 鋤鼻器 / フェロモン / 嗅覚 / 神経再生 |
Research Abstract |
本研究においては、私は鋤鼻系神経路をモデルとしてフェロモン記憶をシナプスの形態変化で捉えようと研究を続けている。昨年度までに、雌マウスに交尾時に形成される記憶に関しても電子顕微鏡を用いた形態学的な解析でこの記憶が副嗅球内に存在するシナプスの形態変化によって形成され、それが長期にわたり保存されていることを報告した。 記憶に関する形態変化の基礎には神経の可塑性が存在する。ニューロンは一般的に不変のように考えられているが、柔軟にその形態を変える。このような形態学的な変化を観察する準備段階として、神経再生をOMP(olfactory marker protein)を指標として、主嗅覚系への損傷を最小にして、鋤鼻神経線維を切断する方法を用いて検討した。 本研究においては、麻酔下のマウス頭蓋骨を嗅球部分で除去し、micro scissorsを用い副嗅球前端部で両側性に鋤鼻神経束を切断した。その後、1,6,20,60,120日後に灌流固定を行い、OMPを標識する染色を行った後、嗅球・鋤鼻器・嗅上皮を観察した。その結果、鋤鼻上皮におけるOMP陽性細胞数は切断後急激に減少し、20日および60日で完全に消失した。また、120日後の個体の一部においてOMP陽性細胞の再発現が観察された。これらの各実験群において、すべての個体で嗅上皮および主嗅球には、ほとんど損傷が観察されなかった。 このように本研究に採用された新しい鋤鼻神経切断法は非常に効果的であることが示された。また、この方法では主嗅覚系にほとんど損傷を与えないことが確認された。これは今後鋤鼻系をモデルとした神経可塑性を検討する上で重要な指標となると考える。
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