2006 Fiscal Year Annual Research Report
最初期発現遺伝子Arcを用いたフェロモンの受容機構と記憶機構の解析
Project/Area Number |
16590138
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松岡 勝人 新潟大学, 医歯学系, 助手 (40323969)
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Keywords | 鋤鼻器 / フェロモン / Arc / VN12 / 嗅覚 / 副嗅球 / 記憶 / マウス |
Research Abstract |
本研究においては、私は鋤鼻系神経路をモデルとしてフェロモン記憶をシナプスの形態変化で捉えようと研究を続けている。昨年度までに形態学的な変化を観察する準備段階として、神経再生をOMP (olfactory marker protein)を指標として、主嗅覚系への損傷を最小にして、鋤鼻神経線維を切断する方法を用いて検討し、新しい鋤鼻神経切断法は非常に効果的であることが示された。 本年度はこれをよりいっそう発展させ、新しいミュータントマウスであるVN12-tau-LacZマウスを用いて、鋤鼻神経の再生機能を特異的に観察した。これまでのOMP-tau-LacZマウスを用いた実験でも鋤鼻神経の再生能力が示されていたが、今回用いるマウスによって特定のレセプターを持った神経を可視化することが可能になった。その結果、VN12-tau-LacZマウスを用いることによってVN12レセプターを発現した鋤鼻ニューロンのみを特異的に染め分けることに成功した。そして前年新たに開発された神経切断法を用いて、鋤鼻神経の再生能力を検討した。嗅覚系に損傷を与えない方法を用いて、副嗅球直前で鋤鼻神経を特異的に切断した。切断後1,5,12,20,30,60日後に断頭の後、Xgal染色を施し、VN12発現ニューロンを可視化した。鋤鼻ニューロンは切断後、いったん完全に嗅球周辺部から退縮した。しかし、20日後には再び、VN12陽性ニューロンが伸展を始め、60日後には副嗅球に再投射することが確認できた。しかも興味深いことに、この再投射ニューロンは再投射を完了する前に鋤鼻レセプターVN12を発現していた。このように鋤鼻神経は再生能力に富み、確実にターゲットに再投射することが確認された。これは今後鋤鼻系をモデルとした神経可塑性を検討する上で重要な指標となると考える。
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