Research Abstract |
星細胞の活性化,肝線維化に影響を及ぼす重要な因子としては,大きく2つに分けると,まず第一にcollagenなど細胞外基質の産生に関与するTGF-βスーパーファミリーとこれに関連するSmads等の細胞内シグナル,そしてもう一つは,星細胞の細胞増殖を促す,PDGF,IGF,とこれらの増殖因子の細胞内シグナルとして重要なMAPK等が揚げられる。またこれらとは別に,肝細胞の保護,増殖因子であるHGFなども線維化治療のkey factorであると考えられる。BMP-7はTGF-β superfamilyに属し,TGF-βに対し拮抗的な作用を示すサイトカインであることがあきらかにされつつある。今回我々は,線維芽細胞に対するBMP-7の作用について検討した。まず,コラーゲンプロモーターの下流にluciferase遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスから線維芽細胞を分離し細胞株を樹立した。樹立した細胞はTGF-βに対し濃度依存的にluciferase活性が上昇した。この細胞にBMP-7をadenoviral vecterによって強発現させ,luciferase活性や線維化に関連するmRNAの推移を検討した。その結果BMP-7が強発現した細胞では,コラーゲンプロモーターに対するluciferase活性が有意に低下し,collagen 1A2のmRNAレベルも同様に低下した。BMP-7は同時にTIMP1,TIMP2の発現を減少させ,bHLH型転写因子の抑制因子として知られているld2,ld3の発現を有意に増加させた。そこで,recombinant-adenovirusによってこの細胞にld2およびld3を強発現させると,BMP-7の作用と同様に線維化抑制効果を示した。以上よりBMP-7は,ld2,ld3の発現を介し,TGF-βの作用に拮抗的に働くことが示唆された。
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