Research Abstract |
肝線維化を抑制することを目的に、線維化に大きく関与していると考えられている星細胞に対して効率的でかつ選択的な遺伝子導入を2種類のアデノウイルスベクターを用いて,肝星細胞で特異的に発現するプロモーターで相同組み換え遺伝子Cre recombinaseを発現するアデノウイルスベクターと,このCre recombinaseにより目的遺伝子を発現するCre/loxPシステムを備えたアデノウイルスベクターをそれぞれ作製した。これらをin vitroとin vivoで共感染させることにより肝線維化に抑制的に作用する目的遺伝子が、肝星細胞に特異的に発現するかどうか,また肝線維化に抑制的に作用するかどうか検討をおこなった。 特異的発現誘導のためにデスミンプロモーター,GFAPプロモーター,Collagen 1A2プロモーターを用いると,静止期の星細胞ではGFP陽性細胞はわずかであったが,活性化星細胞では特にCollagen 1A2プロモーターで60%以上の細胞がGFP陽性となり,また,Collagen 1A2プロモーターでは,肝実質細胞でのGFP発現は,ほとんど認められなかった。目的遺伝子として,TKを星細胞に発現させると,GCVの投与後,CAG,collagen 1A2,デスミンプロモーターの順に細胞死が観察された。また、Smad7の強発現により,Type I collagenの発現が抑制された。胆管結紮やチオアセトアミド投与によるラット肝障害モデルでも,組織学的に線維化が抑制され,Type I collagen mRNA発現の減少,ASTやALTの低下がみられた。以上よりCollagen 1A2プロモーターとCre/loxPシステムを備えたアデノウイルスベクターを用いることにより,活性化星細胞の選択的機能制御の可能性が示唆された。
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