2004 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス誘導性アポトーシスと分子シャペロンによる抑制機構
Project/Area Number |
16590233
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
後藤 知己 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 講師 (20264286)
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Keywords | 小胞体ストレス / アポトーシス / 分子シャペロン / CHO / Hsp70 / DnaJ / Bax / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
小胞体は、分泌蛋白質や細胞膜蛋白質が新たに合成され、修飾やフォールディングなどを受けて成熟する場である。正しい成熟過程が行われるために、小胞体内には、種々の小胞体内分子シャペロンが関与する蛋白質品質管理機構が機能している。しかしながら、何らかの原因で品質管理機構が破綻した場合、小胞体内に異常構造蛋白質が蓄積し、小胞体機能が障害される。これに対して細胞は、小胞体ストレス応答経路を活性化させて、細胞機能を保とうとする。しかし、障害が重度の場合、アポトーシス経路が誘導され細胞全体が処理される。本研究では、小胞体ストレス誘導性アポトーシスが関与する病態の解析と、分子シャペロンによる抑制機構についての研究を行っている。 一酸化窒素(NO)は、炎症時などに過剰に産生され細胞障害の原因となる。従来、NO誘導性アポトーシスは、DNA障害を介すると考えられていた。われわれは、本研究において、過剰なNOが、小胞体ストレス経路を活性化し、転写因子CHOPの誘導およびpro-apoptotic Bcl-2ファミリー分子Baxのミトコンドリア移行を介して、アポトーシスを誘導することを明らかにした。炎症の際の組織障害への小胞体ストレス経路の関与は、細胞レベルだけでなく固体レベルでも認められた。また、サイトゾル分子シャペロンであるHsp70-DnaJ(Hsp40)系が、Baxのミトコンドリア移行の阻害を介して、NO誘導性アポトーシスを抑制することを明うかにした。このHsp70-DnaJ(Hsp40)系は、四塩化炭素投与による肝障害に対しても抑制作用を示したので、広く細胞保護作用を持つことが示唆された。 また、小胞体ストレス誘導性アポトーシスが、大脳の虚血再灌流障害の際の神経細胞死にも関与していることを明らかにした。
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