2004 Fiscal Year Annual Research Report
新しい核酸修飾塩基8-ニトログアノシンによるシグナル伝達の分子制御機構
Project/Area Number |
16590249
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
芥 照夫 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (00346975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤池 孝章 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (20231798)
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Keywords | NO / 8-ニトログアノシン / 抗8-ニトログアノシン抗体 / 細胞保護作用 / 細胞内シグナル伝達 / ヘムオキシゲナーゼ-1 / RNAウイルス / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、新規核酸修飾塩基である8-ニトログノアシン(8-nitroGuo)の生物学的効果について細胞生物学的な検討をおこなった。特に、8-nitroGuoの細胞内シグナル伝達機構とRNAウイルスの複製に与える影響について解析をおこない、以下の知見を得た。 (1)抗8-nitroGuo単クローン抗体を用いてヒト肝癌由来株化細胞HepG2細胞における8-nitroGuoの細胞内局在を核、小胞体、ミトコンドリアに対する抗体との二重染色後、共焦点レーザー顕微鏡による解析をおこなった。また、免疫電顕も検討した。その結果、8-nitroGuoは、細胞質の特に小胞体近傍に局在することが分かった。 (2)グルコース飢餓によるHepG2細胞の細胞死を誘導する系において、8-nitroGuoは、細胞保護作用を示すが、このメカニズム解析として各種アポトーシス関連分子の発現変動解析をおこなった。その結果、飢餓後3時間から6時間の間に細胞内のbcl-XLの発現が一度消失したが、8-nitroGuoは、その発現を維持させた。また、同時期にヘムオキシゲナーゼ-1の発現誘導も見られた。また、eNOSの発現が飢餓後12時間までに減少するが、8-nitroGuoは、逆に、その発現を上昇させた。 (3)RNAウイルスであるGFP-センダイウイルスを8-nitroGuo存在下でCV-1細胞に感染させると遺伝子変異率が上昇し、その変異パターンはC→U transitionが優勢であった。要因として8-nitroGuoがウイルスゲノム中に組込まれることや、8-nitroGuoとNADPH依存性還元酵素やNOSとが反応して生じたO_2^-による酸化的塩基損傷などが考えられた。 以上より、8-nitroGuoが生体内のレドックス応答に関与する新しいシグナル分子であると同時に変異原性物質であることが明らかになってきた。
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