Research Abstract |
今年度は以下の成果を得た. 1)91例の大腸早期癌症例[粘膜内(m)癌23例,粘膜下浸潤(sm)癌68例:高〜中分化:管状,管状・絨毛状腺腫並存隆起(T/TV)型72例(m癌18例sm癌54例),絨毛状腺腫並存隆起(V)型6例(全例m癌),腺腫並存のない平坦(F)型13例(m癌4例sm癌9例)]を対象に,腫瘍の細胞分化と腫瘍発生との関連を検索する目的で,胃型(MUC5AC, MUC6),腸型(MUC2,villin, Cdx2)マーカーの発現を調べ,癌部と周辺腺腫成分とで比較検討した. 2)T/TV型では,腺腫はMUC2,villin, Cdx2発現を全例にみた.MUC5ACは低異型度,管状成分の多いものほど高発現傾向にあった.MUC6は1例を除き発現を認めなかった.癌部では,MUC2,MUC5ACはm癌〜sm癌となるに従い有意に発現低下した.villin, Cdx2は腺腫と癌部で差はなかった. 3)V型では,MUC5AC, MUC2,villin, Cdx2は腺腫と癌部でほとんど差をみなかった.MUC6は腺腫,癌部とも全例陰性であった.T/TV型との比較では,腺腫はvillin発現がより高く,Cdx2は低下を示した.MUC5ACはT/TV型より高かった.癌部ではMUC5ACは有意に高かった. 4)F型では,MUC2はm癌で発現はなく,sm癌3例でのみ発現を認めた.villinは11例,Cdx2は全例で発現をみた.MUC5ACはsm癌1例のみ発現,MUC6は全例陰性であった.T/TV型における癌部との比較では,m癌はMUC2,Cdx2とも有意に低下していたが,sm癌では差はなかった. 5)MUC2の発現低下は,adenoma-carcinoma連鎖を示す腫瘍とde novo腫瘍の双方で,腫瘍の発生・進展過程にとり重要であること,またMUC5ACの発現は,V型で悪性化に関与する可能性が示唆された.
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