2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ感染による胃発がん促進機構の個体レベルでの実験的解析
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16590335
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Research Institution | Aichi Cancer Center |
Principal Investigator |
塚本 徹哉 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍病理学部, 室長 (00236861)
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Keywords | Helicobacter pylori / 胃腸混合型胃がん / Sox2 / Cdx / β-catenin / 小腸型・大腸型 |
Research Abstract |
胃がんは、腺窩上皮粘液であるMUC5ACや、幽門腺粘液であるMUC6を発現する胃型、腸杯細胞の粘液であるMUC2や、吸収上皮刷子縁に存在するvillinに陽性となる腸型、両者のマーカーを発現する胃腸混合型、あるいは特定の分化マーカーを発現しないヌル型に分類される。ヘリコバクター・ピロリ(Hp)の感染に伴って、胃本来の上皮が、次第に腸型形質を獲得し、腸上皮化生が進展するのと同様に、胃がんもHp感染によって腸型にシフトする。この分化の方向性を規定する因子を検討した結果、Sox2が胃型、特にMUC5ACの発現と相関し、一方、Cdx1,2は、MUC2やvillinの発現と関連が見られた。胃腸混合型胃がんでは、両者の発現が見られた。ヌル型では、いずれの転写因子の発現も低下していた。一方で、腸型形質発現における大腸型・小腸型の臨床病理学的な意義については不明な点が多い。胃がんにおける大腸特異的なcarbonic anhydrase 1(CA1)と小腸特異的なsucraseの発現を検討したところ、胃がん86例中、2.3%がCA1陽性であり、14.0%がsucrase陽性であり、大腸形質は稀であることが示された。胃がんの形質発現と遺伝子変異との関連を検討した結果、18.6%の進行がんと16.7%の粘膜内がんでヒトMutL homologue 1(hMLH1)の発現低下があり、microsatellite instability(MSI)(+)と判定された。粘膜内がんの5例はいずれも腺窩上皮型粘液MUC5ACに陽性であった。胃がんでの腫瘍内でのheterogeneityを検討した。腫瘍内で直径2mm以上の領域でβ-cateninが均一に染色される箇所について細胞の形質を検討すると、腸型形質とβ-cateninの核への集積とその遺伝子変異が相関することが明らかとなった。
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Research Products
(7 results)