Research Abstract |
本研究は,皮膚型,粘膜・皮膚型,内臓型の各リーシュマニア症に共通の血清診断抗原,および各病型に特異的な診断抗原を同定し,ヒトおよび保虫宿主の皮膚リーシュマニア症と内臓リーシュマニア症を迅速に診断できるワンステップ免疫クロマト法(Dipstick)を開発することを目的として計画された。今年度は,まず,皮膚および内臓リーシュマニア症モデルマウスの血清についてウエスタンブロット解析を行った。その結果,感染マウスの抗体産生パターンは,接種したリーシュマニアの種類によって異なっていたが,リーシュマニア属に、共通な抗原に対しても抗体産生が起こることが明らかになった。次に,エクアドルの皮膚リーシュマニア症患者血清を材料として,ウエスタンブロット法による抗原分析を行った。エクアドルに分布しているL.amazonensis(La)とL.panamensis(Lp)のpromastigote型虫体の可溶性抗原を5-20%SDS-PAGEミニゲルで展開し,各流行地の患者血清についてイムノブロットを行った。その結果,L.panamensis流行地の患者血清は,La抗原よりはLp抗原と強く反応した。とくに,分子量約120,95,85および75kDaの抗原は検出感度が60-90%と高く,診断用抗原の候補と認定した。今後は,これらの蛋白質の遺伝子を同定し,レコンビナント蛋白を作製する予定である。一方,L.mexicana流行地の患者血清では,Lp抗原やL.mexicanaに近縁のLa抗原に対して明瞭なバンドが観察されず,小さい皮膚病変を形成し早期自然治癒の病型を示すL.mexicana感染に対しては,抗体産生が活発でないことが示唆された。
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