2005 Fiscal Year Annual Research Report
新規粘膜免疫制御分子MICAの免疫学的恒常性維持機構の解明
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16590406
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高橋 一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20206791)
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Keywords | 粘膜免疫 / MICA / 腸上皮細胞間リンパ球 / 炎症性腸疾患 / IL-15 / NKG2D |
Research Abstract |
大腸炎を自然発症するT細胞レセプターα鎖欠損マウスの粘膜上皮においてIL-15の産生が著しく亢進していることを明らかにした。また慢性期の重症度の高い腸炎を発症したT細胞レセプターα鎖欠損マウスの大腸粘膜より分離したβ βT細胞では、IL-15レセプター複合体の発現が著しく亢進していること、また試験管内でIL-15とともに共培養すると、濃度依存的に著しいDNA合成能を示すことが明らかになった。以上の結果をふまえてT3bプロモーターを利用してIL-15遺伝子をT細胞レセプターα鎖欠損マウスの腸粘膜上皮に強制発現させた2重変異マウス(IL-15-Tg/T細胞レセプターα鎖欠損マウス)を作製した。病理組織学的な解析の結果、得られた2重変異IL-15-Tg/T細胞レセプターα鎖欠損マウスは、α鎖単独欠損マウスに比べて、腸炎の発症が早期より観察され、さらに重症遷延化することが明らかになった。重症腸炎発症2重変異マウスの大腸粘膜β βT細胞はIL-4を主体としたTh2型のサイトカインを発現し、またBcl-2の発現亢進を介して、病変部大腸粘膜に長期間にわたって生存・維持されることが明らかになった。また重症化腸炎発症T細胞レセプターα鎖欠損マウスの大腸β βT細胞は活性化NKレセプターNKG2Dを発現していることが明らかになった。このNKG2D^+β βT細胞を腸管局所発現MICA Tg/RAG2欠損マウスに養子移入し、移入後の腸炎の重症度をRAG2遺伝子単独欠損マウスと比較検討した。その結果、MICA遺伝子を有する2重変異マウスにおいて腸炎の程度が軽減することが明らかになった。 今回報告者はT細胞レセプターα鎖欠損マウスを用いて、腸炎の重症遷延化に粘膜上皮より産生されるIL-15が重要な役割を果たしていることを明らかにした。IL-15は組織常在リンパ球における活性化NKレセプダーNKG2Dの発現を正に統御することが報告されており、T細胞レセプターα鎖欠損マウスで観察される慢性腸炎の後期病変の形成および重症遷延化には、大腸粘膜浸潤β βT細胞におけるIL-15/NKG2Dを介したシグナル伝達系が重要な役割を果たすことが窺えた。またMICA Tg/RAG2欠損マウスを用いたT細胞移入腸炎誘発モデルの解析結果より、ストレス誘導性恒常性逸脱化シグナルMICAは、粘膜炎症の制御に寄与することが明確に示した。
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