2005 Fiscal Year Annual Research Report
胎生期の水銀曝露による神経行動毒性に対する遺伝的要因による修飾
Project/Area Number |
16590488
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Research Institution | St.Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉田 稔 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (80081660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅彦 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教授 (20256390)
渡辺 知保 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70220902)
田所 衛 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80081644)
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Keywords | 水銀蒸気曝露 / 神経行動毒性 / 新生児 / メタロチオネイン(MT) / DNAマイクロアレイ / MT遺伝子欠損 / マウス |
Research Abstract |
胎生期や新生児期おける低濃度水銀蒸気(Hg^0)はその後の発育・発達に大きな影響を及ぼすことが知られている。一方、生体内の防御因子の一つであるメタロチオネイン(MT)が重金属毒性軽減作用を示すことが証明されている。日本人にはMT誘導合成能力の低い集団がいることが報告されている。このような集団が胎生期また新生児期に低濃度Hg^0曝露を受けた場合に発育・発達における水銀が及ぼす影響を神経行動毒性の面から検討した。発育期(授乳期)における水銀曝露は、出産後に新生仔と母親を水銀蒸気曝露装置内で離乳時まで曝露を行い、3ヵ月後に行動試験を行った。オープンフィールドでは雌性MT欠損マウス(MT(-/-))群に活動量の低下や探索行動の低下が観察された。受動回避反応試験での嫌悪学習に対する成績は雌雄野生型マウス(MT(+/+))、MT(-/-)マウスともに対照群と曝露群との間に有意な差は認められなかった。モリス水迷路での空間学習についても雌雄MT(+/+)、MT(-/-)マウスともに対照群と曝露群との間に有意な差は認められなかった。曝露直後の新生仔の脳内水銀はMT(+/+)、MT(-/-)マウスともに曝露群が対照群に比べ、有意に高値を示した。しかしながら、曝露群のMT(-/-)マウスの脳内水銀濃度は雌雄ともにMT(+/+)マウスより有意に低値を示した。新生仔の脳のDNAマイクロアレイによる遺伝子発現の変動の解析を行った結果、対照群の遺伝子に比べ、2倍以上の遺伝子の変動を示した遺伝子数は明らかにMT(+/+)マウスに比べ、MT(-/-)マウスに多く見られた。MT(+/+)マウス、MT(-/-)マウスともに水銀曝露により増加した遺伝子より、減少した遺伝子の方が多かった。 以上の結果より、発育期(授乳期)における水銀蒸気曝露においてもMT(-/-)マウス群に活動量の低下が認められた。これらのことより、MT-Iおよび-IIは胎生期や発育期において水銀による神経行動毒性の軽減に何らかの役割を果たしているものと思われる。さらに、発育期における水銀蒸気曝露はMT(+/+)マウス群に比べ、MT(-/-)マウス群において脳の多くの遺伝子の発現量に変動に見られ、今度、水銀に対するMT(-/-)マウスの神経行動毒性機構を解明するうえで重要な情報を提供するものと考える。
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Research Products
(6 results)