Research Abstract |
糖尿病のスクリーニングとして,空腹時血糖値は簡易な方法である反面,空腹状態にのみ基づくために見落としも多い.本研究ではHbA1cに着目し,ブドウ糖負荷試験の2時間値≧200mg/dl(食後高血糖)をゴールドスタンダードとして,診断の正確さを比較し,糖尿病患者の早期発見のための望ましいHbAlc基準値を明らかにする.現時点では,HbA1c≧6.5%という基準が,空腹時血糖と同等の正確さをもつが,特異度が高く感度が低い基準であるため,新規患者の発見のためには,正確さを生かしきっていない可能性が高い.本研究の骨子は,この基準を下げたときの,正確さの変化と,新患者発見のための寄与を見ようというものである. 平成17年度までに356例のデータを収集し,予備解析を行った,空腹時血糖≧126mg/dlの食後高血糖診断の敏感度は0.577,特異度は0.965であった.HbA1c≧6,5%での感度は0.546,特異度は0.9775で両指標とも空腹時血糖と近い値を示した.HbA1cの基準を6.0%に下げたとき,感度は0.732,特異度は0.934となった.食後高血糖診断を空腹時血糖のみで診断した場合に比べ,HbA1c≧6.5%を併用した場合,空腹時血糖で診断できなかった食後高血糖の17.1%が発見でき,陽性者のうち0.56%は偽陽性であった,基準を6,0%にすると,発見割合は43.9%,偽陽性は3.1%となった.基準5.5%ではそれぞれ87.8%,12.9%となった. HbA1c≧6.5%の基準は,偽陽性がほとんどない一方,食後高血糖の発見割合が低く,6.0%まで下げたほうが併用の意義があると思われた.また,5.5%まで下げても偽陽性は12.92%とさほど高くならないので,この基準を考慮してもよいかもしれない.平成18年度はさらに例数を増やし,詳細な解析・検討をする予定である.
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