2005 Fiscal Year Annual Research Report
大規模長期縦断研究による児童の呼吸器症状に対する自動車排ガス汚染の影響評価
Project/Area Number |
16590524
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
由良 晶子 近畿大学, 医学部, 助手 (80142595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 忠彦 近畿大学, 名誉教授 (00088519)
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Keywords | 咳 / 有訴者率 / 児童 / 二酸化窒素 / 自動車排ガス / 大気汚染 / 気象条件 |
Research Abstract |
大阪府の全公立小学校児童を対象とした自覚症状調査が、1973〜2003年まで2〜3年毎に15回実施されてきた。児童の「咳」有訴者率は、1983年以降約10%でほぼ横ばいに推移し、「家の近くは昼も夜も自動車がたくさん通る」(以下「自動車交通量が多い」)該当者率、および大阪府の大気中二酸化窒素(NO_2)濃度もほぼ横ばいの状況であった。市区町村別「咳」有訴者率と「自動車交通量が多い」該当者率は、どの調査年度においても有意な相関関係がみられた(2003年度:r=0.673,p<0.001)。しかし1993年と2003年に「咳」有訴者率がやや上昇する変動が見られ、1983〜2003年までの10回の調査で、「咳」有訴者率と7〜8月の平均気温とが有意な逆相関を示した(r=-0.710,p<0.05)。調査は毎回10月中旬に実施され、夏期の気候が「咳」有訴者率に影響すると考えられた。気象条件が異なる年度の有訴者率を比較する際には、バイアスとなる。そこで気象条件が同様な1993年と2003年について、全67市区町村を「自動車交通量が多い」該当者率のレベルで8区分にまとめ、「咳」有訴者率との関連をみると、「自動車交通量が多い」該当者率が最も低い第8地区(20%未満)と第7地区(20〜25%)の「咳」有訴者率がほぼ等しく、「自動車交通量が多い」該当者率が20〜25%あたりになると、「咳」有訴者率にほとんど影響しなくなると考えられた。一般環境測定局周辺校の「自動車交通量が多い」該当者率とその局のNO_2年平均値とは強く相関する(r=0.750,p<0.001)ので、この回帰式から「自動車交通量が多い」該当者率20〜25%をNO_2濃度に換算すると、小児の「咳」症状に影響を及ぼすNO_2濃度の下限値は、年平均値にして0.022〜0.024ppmと試算された。
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