2005 Fiscal Year Annual Research Report
ドメスティック・バイオレンス被害が子どもの精神健康に及ぼす影響
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16590530
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
飛鳥井 望 (財)東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 参事研究員 (30250210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸本 淳司 東京大学, 医学系研究科クリニクルバイオインフォマティクス研究ユニット, 科学技術振興特任教官
猪子 香代 (財)東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 副参事研究員 (80168476)
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / 児童 / 子ども / 心的外傷 / 心的外傷後ストレス障害 / 目撃 / 治療介入 |
Research Abstract |
昨年度の結果では、海外先行研究で報告されてきたように、DV被害を受けた子どもには、攻撃的行動など外在化された問題行動が生じやすいだけでなく、同時に心的外傷性ストレス症状、抑うつや不安、低い自尊心など、内在化された心理的問題の存在があきらかとなった。本年度は、さらに臨床事例及び文献の検討を通して、DV被害を受けた子どもに対する治療・ケアのあり方について研究した。 困難事例化する子どもに共通する臨床的特徴として、不服従、反抗的、すぐに暴力を振るうなどの問題行動が目立ち、そのため対人関係や社会適応に障害をきたしていた。さらに子どもの攻撃的問題行動が顕著であった3事例の経過を詳しく検討した。いずれも怒りなどの表現を適切にすることの拙劣さ、暴力の正当化、自尊心の傷つきに過敏な傾向と容易な暴力化傾向が見られた。 以上の臨床的検討ならびに文献的検討より、子どもを対象とした治療・ケア(個別ないし集団)のあり方として、原則となる次の7点を取り上げた。(1)暴力の問題が存在することの家族内での言語化、(2)子どもの話の傾聴と正当化、(2)身体的にも心理的にも暴力から身を守る方法の習得、(3)暴力や虐待は、いかなる場合にも認められるべきではないという認識、(4)暴力や虐待は恣意的行為であり、その責任はそれを行使した者にあることの認識、(5)怒りや他の感情を表現するために、暴力に頼らない適切な方法の習得、(6)対人的葛藤解決のために暴力以外の方法の習得、(7)子どもの自尊心の育み、である。また治療・ケアが目指すポイントとしては、(1)暴力に対する安全確保行動に関する知識と利用できる社会資源に関する知識の向上、(2)対人的葛藤を処理し、暴力を振るわずに葛藤を解決する力の向上、(3)暴力を正当化したり、受容する傾向の修正、(4)治療・ケアを通した自分自身の変化の肯定的受け止め、の4点を取り上げた。
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Research Products
(5 results)