2004 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌や非アルコール性脂肪性肝炎の発症・進展に対する脂質シグナルの関与
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16590574
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
堀江 泰夫 秋田大学, 医学部, 講師 (30282164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 純夫 秋田大学, 医学部, 教授 (20138225)
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Keywords | Pten / ノックアウトマウス / 肝細胞 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 肝癌 / 脂質 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
肝細胞特異的Ptenノックアウトマウス(Pten欠損マウス)の肝臓では、10週齢で中心静脈周囲の肝細胞の細胞質に大滴性脂肪滴、40週齢で肝細胞の風船様腫大、マロリー体、小葉内炎症性細胞浸潤、傍ジヌソイド領域の線維化、腺腫、74〜78週齢で肝癌が発症し、組織学的にも自然経過においてもヒトの非アルコール性脂肪性肝炎ときわめてよく類似していた。 Pten欠損マウスの脂肪肝は、Ptenの欠損に基づくPI3kinaseの活性化を背景にAkt-Foxo1-PPARγおよびAkt-PPARγ/SREBP1cシグナル伝達経路が活性化され、その下流のaP2、adipsin、adiponectin、SCD1、FAS、ACCの発現増加に伴い肝細胞における脂肪酸や中性脂肪の合成が促進され発症した。脂肪性肝炎は、脂肪酸のβ酸化に関与する酵素であるAOX、L-PBE、PTLの発現亢進とこれに伴う酸化ストレスの増加が細胞膜の脂質過酸化を惹起し引き起こされた。 一方、持続的な酸化ストレスによる肝細胞における8-hydroxydeoxyguanosineの産生促進に基づく酸化的DNA障害とAktやMAPKの活性化に基づく肝細胞の増殖能の亢進は相加的に作用し腺腫・癌の発生に寄与していると考えられた。また、Pten欠損マウスの肝臓では脂肪酸の増加、なかでもオレイン酸分画の増加が顕著であった。オレイン酸は、細胞膜の流動性を増加させ細胞の代謝や増殖の亢進に寄与することが報告されており、肝細胞の分裂速度を速め腫瘍の形成をもたらす遺伝子変異の獲得に一役かっている可能性も考えられた。 以上のようなPten欠損マウスの肝臓における脂肪化、炎症、発癌の発症機序はヒトの非アルコール性脂肪性肝炎や肝癌の発症・進展にも関与している可能性がある。
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Research Products
(4 results)