Research Abstract |
炎症性腸疾患の成立にはTh1免疫応答が関与し,炎症性サイトカインおよびメディエーター等が微小循環障害を惹起し病態が進展すると考えられる。しかし,特定の宿主にのみ発症し,また重症度が多彩である原因は明らかになっていない。オステオポンチン(OPN)は,Th1免疫応答の開始に必須のサイトカインとして作成する。OPN遺伝子のプロモーター領域の塩基配列を解析したところ,日本人では4つの短塩基変異(SNP)が存在し,特にnt-443のSNPはC型慢性肝炎患者における肝炎活動性と関連することを見出した。一方,OPNを肝細胞に過剰発現するトランスジェニックマウスを作成し観察したところ,本マウスは免疫応答がTh1系優位であり,抗核抗体が陽性で,CTL浸潤を伴う肝壊死を自然発症した。また肺,唾液腺,消化管などにもCTLの浸潤が観察され,肝以外の臓器における免疫応答もTh1系優位に偏っていると考えられた。以上の成績から,nt-443のSNPはOPNの転写を制御していると推定され,その発現が高度になる宿主では,細菌感染等の誘因を契機に,消化管を場とする免疫応答のTh1/Th2系免疫応答が破綻し,炎症性腸疾患を発症ないしは重症化する可能性があると示唆された。そこで,炎症性疾患のnt-443のSNPをINVADER法にて測定したところ,潰瘍性大腸炎ではT/T38%,T/C0%,C/C62%で,またクローン病ではT/T20%,T/C60%,C/C20%であり,nt-443のSNPのT/Cを有する患者が多い傾向が認められた。同時にnt-616のSNPの測定では,潰瘍性大腸炎ではT/T0%,T/G62%,G/G38%,クローン病ではT/T20%,T/G20%,G/G60%であり,潰瘍性大腸炎ではT/G,クローン病ではG/Gがやや優位であった。今後は,病態や重症度を比較することで遺伝子の特徴的所見が見出せればと思われる。
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