Research Abstract |
線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は,腎臓に働きリン利尿を引き起こすとともに,活性型ビタミンDの産生を抑制し,生体のリンバランスの維持に大きな役割を果たしていることが知られている.この研究では,主要な標的器官である腎臓の機能が低下した状態で,FGF23がどのような動態と役割を示すかを,最近開発された全長分子のみを検出するキットを用いて検討した. 保存期腎不全患者の血清中では,腎機能の低下にともなってFGF23濃度の上昇がみられ,比較的腎機能の保たれているグループでは腎臓のリン再吸収閾値と正の相関を示し,血中活性型ビタミンD(1,25D)濃度と負の相関関係が見られた.このような関係は,腎機能が30%を切ると見られなくなっており,腎不全の初期においてはリンの負荷に対してFGF23濃度が上昇することは,生理的に理にかなっているが,正常なネフロン数が減少すると,リンの排泄促進も充分に行われず,1,25D濃度も低下するため,二次性副甲状腺機能亢進症の原因の一つになっていると考えられた. 一方,残腎機能のない透析患者においては,FGF23濃度のさらに著明な上昇が見られた.これは,当初の副甲状腺ホルモン(PTH)濃度より,2年後のPTH濃度により良く相関することから,さらに検討を進めたところ,将来内科的治療に抵抗する重症の二次性副甲状腺機能亢進症発症の最も良い予測因子になることが判明した,また,静注1,25D療法の反応予測にも有用であった.腫大した副甲状腺ではFGF23 mRNAの発現はみられず,骨において発現が確認された.静注1,25D療法中のFGF23の上昇は,1,25Dの使用量に比例しており,それまでに使用されたが効果がなかったビタミンD製剤の量を反映するものと考えられた.したがって,透析患者において血清FGF23濃度の測定は,無効なビタミンD療法を避けるために有用な検査と考えられた.
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