2005 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性腎症における新規治療法開発-脂肪酸結合蛋白の腎保護作用の検討
Project/Area Number |
16590803
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Research Institution | St.Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
木村 健二郎 聖マリアンナ医科大学, 腎臓・高血圧内科, 教授 (00161555)
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Keywords | 糖尿病性腎症 / 肝臓型脂肪酸結合蛋白 / 尿中脂肪酸 / 間質尿細管障害 / ネフローゼ症候群 / 遺伝子導入動物 / バイオマーカー |
Research Abstract |
腎疾患の予後には、糸球体病変よりも間質尿細管障害(TID)が重要である事が広く知られている。TIDの進行には、脂肪酸ストレスが関与している事を基礎実験で明らかにしたことから、ヒト近位尿細管に発現し、細胞内の脂肪酸代謝に関与する肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)に注目した。 透析導入原因疾患の第一位である糖尿病性腎症をターゲットにL-FABPの動態をヒトL-FABP染色体遺伝子導入(Tg)マウスを使用し検討した。その結果、ストレプトゾトシン糖尿病マウスでは、腎臓での過酸化脂質の蓄積および間質尿細管障害が認められ、近位尿細管におけるL-FABPの発現は亢進し、尿中への排泄が増加する事が示された。 そこで、糖尿病性腎症における尿中L-FABPの臨床的意義を検討した。対象は、腎生検で糖尿病性腎症と診断された患者(DN,n=8)とコントロールとして微小変化型ネフローゼ症候群の患者(MCNS,n=12)とした。両群の尿蛋白排泄量は、同定度であったが、尿中脂肪酸の排泄量は、MCNSに比べ、DNで有意に高値であった。腎機能は、MCNSに比べ、DNで有意に低下していた。間質尿細管障害の程度は、MCNSにくらべ、DNで有意に強く認められた。尿中L-FABPは、MCNSにくらべDNで有意に高値であった。MCNSとDNの腎生検組織において、L-FABPは近位尿細管に特異的に染色された。その染色性は、MCNSに比べ、DNにおいて強い傾向にあった。 DNでは、脂肪酸が近位尿細管に過剰に負荷され、間質尿細管障害が進行している可能性がある。このような状況では、近位尿細管におけるL-FABPの発現が亢進し、尿中へのL-FABP排泄が増加すると推測される。 尿中L-FABPは、近位尿細管に負荷された脂肪酸ストレスの程度を反映する指標であると考えられる。
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