2005 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺中毒性周期性四肢麻痺における筋チャネル異常の同定と病態解明
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16590836
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
有村 公良 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (20159510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高嶋 博 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (80372803)
亀山 正樹 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (60150059)
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Keywords | 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺 / 家族性周期性四肢麻痺 / 遺伝子変異 / 電位依存性カリウムチャネル |
Research Abstract |
本邦における甲状腺中毒性周期性四肢麻痺症例で、原因の可能性のある筋イオンチャネル候補遺伝子の異常の有無を検討した。対象は甲状腺中毒性周期性四肢麻痺の男性患者7名を患者群(TPP)とし、健康な成人275名を正常コントロール群(Control)とした。また、四肢麻痺を伴わない甲状線機能亢進症の患者17名を陽性コントロール群(HD)とした。異常筋チャネルの候補として家族性低カリウム血症性周期性四肢麻痺の原因であるNaチャネル遺伝子SCN4AとCaチャネル遺伝子CACNA1Sの変異部位、家族性周期性四肢麻痺のKチャネル遺伝子KCNJ2とKCNE遺伝子の全蛋白コード領域、さらに電位依存性KチャネルKCNQファミリーのなかから骨格筋に発現してまだ疾患との関連が唯一不明なKCNQ5の全蛋白コード領域を変異検索の対象とした。末梢血から抽出したDNAを材料とし、各遺伝子のエクソンをPCRで増幅したのち、シークエンスで塩基配列の変異を調べた。アミノ酸置換を伴う変異はFisherの正確確率検定を用いてコントロール群との有意差を検定した。 結果は次の通りであった。アミノ酸置換を伴う変異(2784T>A、H928Q)を1名のKCNQ5遺伝子に認めた。ヘテロなミスセンス変異で928番のヒスチジンがグルタミンに置換していた。しかし変異の頻度は正常コントロール群および陽性コントロール群との間で有意差を認めなかった。アミノ酸置換を伴わない正常多型をKCNQ5、KCNJ2、KCNE3に1カ所ずつ認めた。SCN4AとCACNA1Sの変異部位は認めなかった。 今回の研究において甲状腺中毒性周期性四肢麻痺の候補遺伝子として検索した筋チャネルの5遺伝子、KCNQ5、KCNJ2、KCNE3、CACNA1S、SCN4Aには有意の変異は認めなかった。このことから甲状腺中毒性周期性四肢麻痺には家族性周期性四肢麻痺の遺伝子変異は関与していないことが確認できた。また、電位依存性Kチャネル遺伝子KCNQファミリーのなかで骨格筋に優位に発現しているKCNQ5もこの疾患の原因遺伝子ではないことが確認できた。今後、対象の筋チャネルの範囲を更に広げて検索する必要がある。
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