2005 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病の新たな治療法の開発に向けた遺伝子導入による膵ベータ細胞の再生
Project/Area Number |
16590881
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田代 文 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40136213)
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Keywords | 糖尿病 / 遺伝子 / アデノウイルスベクター / 再生医学 |
Research Abstract |
現在、糖尿病の根本的治療として膵移植や膵島移植などが行なわれつつあるが、ドナー不足や術後の拒絶反応など多くの問題が残されている。近年、生体内での存在が示唆される組織幹細胞が注目され、膵臓においても膵幹細胞の存在が示唆されている。我々は膵再生に関与する転写因子のPDX-1に注目し、アデノウイルスベクターを用いて総胆管を経由して膵へ導入し、膵再生時に観察される膵間質の増生、および膵管様構造の増加と膵実質内にインスリン陽性細胞が認め、報告した(Gene Ther 10:15,2003)。しかし、糖尿病モデル動物を完治しうるほどのインスリン産生細胞は得られておらず、本研究において新たな候補因子を検索し、インスリン産生細胞を効率よく生体内で分化誘導することを目的とした。 まず、アデノウイルスベクター導入後に観察される膵管様構造について、膵管のマーカーであるCK19に対する免疫染色を行ったところ染色が確認され、さらに、この構造の中に抗インスリン、抗CK19抗体で二重に染色される細胞が確認され、再生時におけるインスリン産生細胞の発生・分化と同様なことが起こっていると考えられた。そこで、再生の効率を上げる目的で、種々の分化誘導因子遺伝子・増殖促進因子遺伝子の検討を行った。IGF-1遺伝子は膵発生に関与し、またIGF-1のシグナル伝達機構がaktを介することなどから、IGF-1に着目しアデノウイルスベクターに組み込んだ。pdx-1遺伝子と共に膵管に導入した結果、著明な間質様構造の増加と、インスリン陽性細胞数の増加を認めた。以上より、インスリン産生細胞の発生・分化に関与する遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて導入することにより出現したこれらの細胞が、膵ベータ細胞の発生機構に類似して生じた可能性があり、成体組織における幹細胞を分化誘導する方法の開発に寄与するものと考えられる。
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Research Products
(1 results)