Research Abstract |
経静脈グルコース負荷試験(FSIGT)の際の血糖値の低下は,インスリン分泌(AIR),末梢組織(主に骨格筋)への糖取り込みに特異的なインスリン感受性(SI2*),インスリン非依存性(グルコース濃度依存性)糖取り込み(SG2*),インスリンまたはグルコース依存性の糖負荷に対する肝臓からの内因性糖放出(EGP)の抑制などにより規定される。今回は昨年度に続き,安定同位体グルコースを用いたFSIGTの解析において,肝臓のcompartmentを組み込んだモデル(AJP288:E1038,2005)をもとに,グルコース(hSG2*)もしくはインスリン(hSI2*)がEGPを抑制する作用の定量化を試みた。対象は健常者27名と,BMIをマッチさせた耐糖能異常者15名(境界型13名、糖尿病2名)。 成績 耐糖能異常者では,耐糖能を表すKg値、AIRは低値であった。健常者,耐糖能異常者の間で,SI2*及びSG2*には有意差を認めなかった。すなわち非肥満の軽度の耐糖能異常では,末梢のインスリン感受性,グルコース依存性糖取り込みには障害を認めなかった。hSI2にも両群で有意差は認められなかったが,hSG2は0.751±0.040,0.571±0.046(p=0.01)で耐糖能異常者において低値であった。すなわち軽度の耐糖能異常で,EGPを抑制するグルコース作用に障害が認められた。AIRとhSG2の間には,全症例(R=0.55,p<0.01),健常者のみ(R=0.40,p=0.038),耐糖能異常者のみ(R=0.61,p=0.015),いずれにおいても有意な正の相関が見られ,AIRの低下とEGPを抑制するグルコース作用の傷害に関連が認められた。 結論 AIR低下による耐糖能低下の成因として,EGPを抑制するグルコース作用の低下も関与する。
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