Research Abstract |
白血病幹細胞が正常造血幹細胞と同様の細胞表面マーカーを発現し,自己複製能と多分化能を持つことが近年報告され,これらの性質だけでは正常造血を維持できないことが再認識された.造血幹細胞はその増殖能を保ったままで長期間生存しており,活性酸素などの遺伝子変化を起こす要因にさらされる確率が高い.個体が白血病を起こさずに一生を終えるためには,造血幹細胞の増殖とその生存が厳密に制御されていることが重要である.転写因子GATA-2は増殖中の造血幹細胞に発現しており,その増殖と生存に必須である.本申請研究ではGATA-2の発現と細胞の生存,細胞死との関係について解析を行っており,今年度は,GATA-2発現の分解系による制御と細胞の生存についての検討を行った.紫外線やX-線はDNAに障害を与え,遺伝子異常を惹起し細胞死を誘導する.われわれは,この紫外線の照射による細胞死の誘導に先立って,照射後数分以内にGATA-2の著明な発現低下が起こることを見いだした.この時,GATA-2mRNA発現は低下していなかった.また,プロテアソーム阻害剤,MG-132,clasto-Lacatacyctinの添加は,紫外線照射後のGATA-2発現の低下を阻止した.一方,無刺激の状態でもGATA-2蛋白質は速い代謝回転にさらされており,その速度はサイトカイン刺激により変動した.さらに,われわれは免疫沈降反応によりユビキチン化されたGATA-2の存在を明らかにし,分解を誘導する責任ドメインを同定した.これらの結果により,プロテアソーム依存性の蛋白質分解系を介したGATA-2発現の制御系が存在し,細胞の生存の制御に関わっている可能性が示された.
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