2005 Fiscal Year Annual Research Report
新規FLT3キナーゼ阻害剤の臨床応用へ向けた基盤的研究と評価モデルマウスの作製
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16590932
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清井 仁 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90314004)
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Keywords | FLT3 / 白血病 / 分子標的療法 / チロシンキナーゼ / 阻害剤 |
Research Abstract |
我々は数十nMのIC_<50>値を示す新規FLT3キナーゼ阻害剤を見出した。昨年度に引き続き、この薬剤の白血病治療におけるproof of principleを確認するための基礎的検討を行うとともに、FLT3遺伝子変異陽性症例を更に細分化するNPM1遺伝子変異との関連性を検討し、下記の結果を得た。 1.既存の抗白血病治療薬であるAra-Cと抗腫瘍効果ならびに骨髄抑制に対する効果を定量PCR法、FCM法を用いて検討した。変異FLT3発現32D細胞をC3Hマウスに静注後10日目より4日間の薬剤投与を行い、治療前後での末梢血中白血病細胞数の変化を定量PCR法を用いて検討した所、阻害剤投与群では、治療により白血病細胞数の減少が認められたのに対し、Ara-C群では、治療効果を認めなかった。一方、治療後の骨髄中の白血病細胞の割合をFCMで定量化によっても同様の結果が得られた。注目すべき点は、Ara-C治療群においては、骨髄細胞数が約1/10に著減していたのに対し、阻害剤治療群では、ほとんど骨髄抑制を認めなかった。 2.新規FLT3阻害剤の有用性は確認されたが、実際の臨床使用においては、その効果を予測するサロゲートマーカーが必要である。リン酸化STAT5は、その有力な候補であるが、我々はFCMでも使用可能なリン酸化STAT5抗体を作製し、短時間の阻害剤処理前後でSTAT5リン酸化状態の変化を比較することにより、増殖抑制効果を予測する検査システムを構築した。 3.核内リン酸化蛋白をコードするNucleophosmin(NPM1)遺伝子変異はFLT3遺伝子変異と強い相関関係を示し、臨床的には、NPM遺伝子変異の存在は寛解導入率に対して独立した良好な予後因子であり、更に、FLT3遺伝子変異陽性群においても寛解導入率、全生存率に対して良好な予後因子であることを明らかにした。したがって、本遺伝子変異は臨床的には化学療法に対する感受性を規定する重要な遺伝子変異であり、一部の白血病細胞においてはFLT3遺伝子異常と協調して病態形成に関与している可能性を明らかにした。
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