2004 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体の新しい転写共役因子TRAP/メディエーター複合体による造血調節
Project/Area Number |
16590941
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 光宏 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (50362794)
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Keywords | ビタミンD受容体 / レチノイン酸受容体 / TRAP220 / HL-60細胞 / 増殖・分化・恒常性維持 / 顆粒球分化 / 単球分化 / RNA干渉法 |
Research Abstract |
私がクローニングした哺乳類TRAP/Mediator複合体は、RNAポリメラーゼIIホロ酵素のうち約25個のサブユニットから成るサブ複合体である。TRAP/Mediator複合体は様々なアクチベーターのシグナルを最終的に統合し、RNAポリメラーゼIIコア酵素複合体に伝達する、全転写に必須の基本的転写共役体であり、細胞内情報伝達の終点に位置すると考えられる。 核内受容体による転写活性化は多段階を踏むと考えられる。即ち、コレプレッサーが外れた後にHAT転写共役因子群がクロマチン構造を弛緩し、次にTRAP/Mediator複合体が基本転写因子群と共にリクルートされて転写が開始する。本複合体のうち、核内受容体にリガンド依存性に結合するサブユニットは唯一TRAP220である。 私はTRAP220欠損マウスを作製し、これまでに、TRAP220が核内受容体機能を調節することによって個体や細胞の増殖・分化・恒常性維持に重要な役割を担うことを示してきた。TRAP220の細胞分化における役割が最初に示された例がPPARγ2を介した間葉系前駆細胞の脂肪細胞への分化における役割である。本研究では主に血球において検討を行った。コロニーアッセイにてRAP220欠損マウス胎児羊膜由来の造血前駆細胞の単球への分化能の低下を認めた。また、HL-60前骨髄性白血病細胞株でTRAP220をRNA干渉法によりノックダウンしたところ、レチノイン酸やビタミンDによる分化が遅延した。これらのことから、TRAP220がレチノイン酸受容体やビタミンD受容体を介した骨髄球系造血前駆細胞の分化に重要な役割を担うことが強く示唆される。このように、造血組織を構成する多系統の未分化細胞が核内受容体を介して正常に分化・成熟するためにTRAP220は必須である可能性が考えられる。
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Research Products
(4 results)