2005 Fiscal Year Annual Research Report
骨随非破壊的同種造血幹細胞移植法を用いた全身性強皮症の治療法の開発
Project/Area Number |
16590983
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西村 純二 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (20112336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩川 左斗志 九州大学, 大学病院, 講師 (20215940)
本村 誠一 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (40304828)
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Keywords | 強皮症 / 造血幹細胞移植 / 同種移植 / GVHD |
Research Abstract |
全身性強皮症(SSc)は皮膚の硬化と様々な臓器病変を伴い、広範で高度の皮膚硬化は生活の質を著しく障害し、心肺腎などの病変は生命予後を左右する。様々な免疫抑制剤による治療が試みられているが、有効な治療法はなく、新規治療法の開発が期待されている。本研究は造血器悪性腫瘍に対して行われている侵襲の少ない骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(NST)を用いて、正常の免疫系の再構築を計り、SScを治癒させる試みである。倫理面の配慮を充分に行い、対象症例の選択、治療プロトコールの検討、安全性、臨床効果判定を行った。1)対象症例の選択とドナー条件:SScの診断基準(厚生省強皮症調査研究班1992年)を満たし、70才以下、罹病歴4年以内、スキンスコア15点以上で内蔵病変のある患者を対象症例とした。ドナーの適格条件は、患者とHLAのA/B/DR座がジェノタイプにおいて6/6が一致していることと、「血縁者間同種末梢血幹細胞移植のための健常人ドナーからの末梢血幹細胞採取に関するガイドライン」の条件に合致することとした。2)治療プロトコール:低線量の全身放射線照射(200cGy)とフルダラビンを前処置として、ドナーから末梢血造血幹細胞を採取(CD34陽性細胞数が合計2×10^6/kg以上)後患者に移植し、移植後の免疫抑制にミコフェノレート・モフェチルとシクロスポリンの併用を行う方法を用いた。3)造血幹細胞移植後の安全性、GVHDの解析:安全性の評価、移植片の生着の評価、GVHDの頻度、重症度の評価を行った:4)造血幹細胞移植後の臨床効果の判定:皮膚硬化、内臓病変に対する効果の有無を評価する。移植前後に一定期間ごと、皮膚硬化の程度を改変ロッドナン皮膚スコアにて評価する。移植後に内蔵病変の評価を心機能検査、肺機能検査、CT等で行う。移植前後でHAQ-D1テストを行い、患者QOLを評価した5)造血幹細胞移植後のキメリズム解析:ドナーおよびレシピエント由来の造血細胞の定量キメリズム解析を定期的に施行した。6)造血幹細胞移植後の免疫系と自己抗体の解析を行った。 第1例目の症例は52才女性で、各種治療に抵抗性で、皮膚硬化(スキンスコア30点)と肺線維症(%VC 66.5%,KL-6 1080U/ml)が進行性であった。HLA一致の弟からG-CSF動員による末梢血幹細胞を用いNSTを施行。移植後輸血の必要はなく、ドナー型の完全キメラは1ヶ月以降維持されている。急性GVHDはみられていない。NST後3ヶ月にはスキンスコアの改善(19点)、8ヶ月後には肺線維症の改善、抗Scl抗体価の低下がみられた。移植後約1年後に口腔粘膜と腎臓に慢性GVHDを認めた。この症例の臨床経過は、SScに対するNST療法が有効な治療法となる可能性を示唆するものである。
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Research Products
(9 results)