2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト遺伝性疾患GCPSの相同疾患マウスにおける無嗅脳症と多指症の分子メカニズム
Project/Area Number |
16591075
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
成瀬 一郎 鳥取大学, 医学部, 教授 (20113326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 悦子 鳥取大学, 医学部, 助手 (40335526)
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Keywords | 無嗅脳症 / 多指症 / GCPS / Gli3 |
Research Abstract |
我々が系統維持している遺伝性多指症/無嗅脳症マウス(Pdn)の責任遺伝子はGli3で、Pdn/Pdnで発現抑制が認められるが、その原因はGli3のイントロン3にトランスポゾンが挿入されているためである。Pdn/Pdnは、責任遺伝子の相同性や、表現型の類似からGreig cephalopolysyndactyly syndrome(GCPS)の相同疾患であると考えてきた。Pdn/Pdnの15-20%が外脳症を発症し、残る80-85%は無嗅脳症であることから、無嗅脳症と外脳症との間には連続性があると考えた。そこで、本年度は、このPdn/Pdnマウスに外脳症を発症させる薬物を投与して、責任遺伝子であるGli3の発現抑制と薬物の毒性の相乗効果を外脳症を指標にして調べ、さらにその分子メカニズムを調べた。 抗痙攣剤であるバルプロ酸(VPA)は、マウス神経管閉鎖異常を惹起することが知られている。Pdn/PdnにVPAを投与すると、神経管閉鎖異常が増加した。つまり、Pdn/PdnはOTAによる催奇形性の感受性が高いことを意味している。感受性の高さは、Gli3遺伝子発現量が抑制されていることに原因していると考えられる。この条件を設定した後、胎生10日胚を摘出し、卵黄嚢膜からジェノミックDNAを抽出し、PCRで遺伝子型を決定した後、胚本体をwhole mount in situ hybridization(WISH)法で遺伝子発現を調べた。WISH法では、Gli3に関連する遺伝子として、ShhとFgf8の発現を調べた。Shhは、ventral forebrain、floor plate、notochordに発現が認められたが、無処理の+/+に比べPdn/Pdnでは差が認められなかった。VPA処理によって神経管閉鎖異常を誘発した胚でも異所性の発現を認めなかった。一方、Fgf8では、無処理の+/+でcommissural plate、dorsal isthmal neuroepitheliumに発現が認められた。無処理の+/+のcommissural plateでは、I字型にFgf8が発現していたが、Pdn/Pdnのcommissural plateはV字型に発現していた。このことから、Fgf8の遺伝子発現はGli3発現抑制の影響を受けていることが確実になった。VPA処理され外脳症を示しているPdn/Pdn10日胚では、Fgf8遺伝子がcommissural plateで広く強く発現していた。このことから、Gli3発現抑制と環境要因であるVPAによる相乗効果によって、Fgf8が異所的かつ過剰に発現し、外脳症を発症していることが示唆された。
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Research Products
(3 results)