Research Abstract |
「蚊アレルギー」とは,蚊刺に対して水疱や壊死を伴う激しい局所反応に加え,発熱,リンパ節腫脹,肝機能障害などの全身症状を呈する疾患である。近年,この蚊アレルギーの基礎に,EBウイルスが感染したNK細胞(EBV-NK)の増殖症が潜んでおり,長期の観察で多くの症例が,NK細胞型悪性リンパ腫を発症することが明らかとなってきている。我々はこれまでに,蚊アレルギーを伴ったEBV-NK増殖症患者について,患者のCD4^+T細胞が,ヒトスジシマカ唾液腺抗原刺激に対して著しく反応し,この活性化CD4^+T細胞を介してEBV-NKからEBVの再活性化が誘導され,蚊アレルギーの病態形成に関わっていることを明らかにした。また,この蚊唾液腺抗原刺激を受けた活性化CD4^+T細胞は,EBV-NKに作用し,EBV発癌遺伝子LMP1の発現を増強してEBV-NKの増殖を亢進させることもみいだした。今回我々は,蚊唾液腺抗原刺激により患者CD4^+T細胞から分泌されるサイトカインを検討した結果,特にIL-4,IL-10の発現がmRNAレベル,蛋白レベルで著明に増加し,蚊アレルギーではT細胞はTh2優位の反応を示すことが判明した。また,蚊抗原刺激を受けたCD4^+T細胞の上清を,EBV-NKの培養系に加えることにより,LMP1 mRNAの発現増強とEBV-NKの増殖亢進がみられたことより,この培養にIL-4,IL-10に対する中和抗体を加えてLMP1の発現,EBV-NKの増殖に及ぼす影響を検討した。しかし,抗IL-4抗体,抗IL-10抗体はLMP1 mRNAの発現,EBV-NKの増殖には影響せず,一方,抗IL-2抗体がLMP1 mRNAの発現抑制に,また抗TGF-β抗体が発現増強に働くことが明らかとなった。さらに,抗TGF-β抗体はEBVの再活性化に対しては抑制的に働くことが判明した。
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