2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経新生と神経回路網からみたうつ病の発症と病態に関する研究
Project/Area Number |
16591148
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30301401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70226702)
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
山本 恵 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90347170)
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Keywords | 神経幹細胞 / 抗うつ薬 / 気分安定薬 / うつ病 / 神経新生 / 神経回路網 / 培養細胞 |
Research Abstract |
うつ病の病態基盤を神経幹細胞の分化および新生神経細胞の発達とアポトーシスの観点から検索し、神経回路網の構築の過程での神経可塑性変化における神経幹細胞の役割を明らかにすることを目的に研究を進め、まず神経幹細胞の分化能への抗うつ薬・気分安定薬の効果を検討した。即ち、Gageらの単層培養法の改良法で胎齢13-14日のラット胎仔終脳より得た神経幹細胞を用いて、各薬物処置による神経細胞への分化能の変化を検索した。フルオキセチン,パロキセチンは0.1μMで、リチウム,バルプロ酸はそれぞれ300μM,30μMにおいて、有意な神経幹細胞分化促進効果を示した。この分化促進作用は、気分安定薬に比べ抗うつ薬処置群で強い傾向が認められた。また、抑うつ気分や認知機能障害等うつ病と同様の臨床症状出現をみることが多くそのcomorbidityが注目されるアルコール依存症を比較疾患群として考慮し、神経幹細胞へのアルコールの影響に関しても検討を加え、アルコール投与により神経細胞への分化が抑制されることを確認した。次に、神経回路網の維持において神経細胞の新生とともに重要な役割を担うと考えられる神経細胞の生存機能について、培養神経細胞に対して培地栄養因子の除去による障害を誘発し各薬剤を処置した際の細胞生存機能への影響を検討した。1mMリチウム,0.1mMバルプロ酸処置群は30ng/mlのBDNF処置群と同様に、対照群に比べ有意な神経細胞生存機能増強効果を示した。一方、抗うつ薬(フルオキセチン,パロキセチン)処置群ではこのような生存機能増強効果は認められず、抗うつ薬による神経幹細胞の分化促進作用が抗うつ効果と、また、気分安定薬による神経細胞の生存機能増強・保護作用が気分安定効果の発現と結びついている可能性が示唆され、今後これらの作用メカニズムを更に詳細に検討する予定である。
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