2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経新生と神経回路網からみたうつ病の発症と病態に関する研究
Project/Area Number |
16591148
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30301401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70226702)
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
山本 恵 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90347170)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 助手 (40381256)
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Keywords | 神経幹細胞 / 抗うつ薬 / 気分安定薬 / うつ病 / 神経新生 / 神経回路網 / 培養細胞 / 移植 |
Research Abstract |
昨年度報告した抗うつ薬・気分安定薬が神経幹細胞の機能や神経細胞の生存に及ぼす影響について、その作用と関連する細胞内シグナル伝達系の同定を試みた。BDNFのシグナル伝達系の主要な分子であり、細胞の分化に影響するMAPキナーゼ系でMEKによりリン酸化をうけるERKと、神経細胞の生存機能に重要な役割をもつPI3キナーゼ系のAktに関し、アミトリプチリン(0.1μM)、フルオキセチン(0.1μM)、パロキセチン(0.1μM)、リチウム(1mM)、バルプロ酸(0.1mM)処置による変動を検討した。神経幹細胞における活性型(リン酸化)ERKのWestern blot法による評価において、気分安定薬に比べ、抗うつ薬処置群で、特にフルオキセチンとパロキセチンによるERKのリン酸化増強を認めた。この増強効果はMEK阻害剤により抑制された。昨年度も比較対照として検討したエタノール処置群ではリン酸化ERK発現の減弱を認めた。神経細胞におけるAktのリン酸化は気分安定薬バルプロ酸により増強された。バルプロ酸に比べリチウムのAktリン酸化増強作用は弱く、抗うつ薬ではアミトリプチリンの増強作用が強かった。これらのAktリン酸化増強効果はPI3K阻害剤により抑制された。以上より、抗うつ薬によるERKシグナルを介した神経幹細胞の分化促進作用が抗うつ効果と、気分安定薬によるPI3K-Aktシグナルを介した神経細胞の生存機能増強作用が気分安定効果の発現と結びついている可能性が示唆された。さらにヒトでの病態理解への還元を目指す試みとして、海馬での神経幹細胞の増殖・生存の障害を認める精神疾患モデル動物へマーキング神経幹細胞を経静脈的に移植し、側脳室周囲および海馬領域への移行を確認した。更なる詳細な検討が必要ではあるが、神経新生障害が関連する病態に対し神経幹細胞移植が治療的役割を担う可能性が示唆された。
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