2005 Fiscal Year Annual Research Report
MATH-2転写因子トランスジェニックマウスの気分障害疾患モデル動物としての検討
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16591169
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Research Institution | St.Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
長田 賢一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20233504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝倉 幹雄 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (70103504)
松井 宏晃 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90181685)
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Keywords | bHLH / 気分安定薬 / リチウム / Math / GAP-43 / 転写因子 / eEF2 / プロテオミクス |
Research Abstract |
気分安定薬(リチウム、カルバマゼピン)は双極性障害の気分を安定させる根本的治療である。従って気分安定薬の共通するメカニズムが双極性障害の基本的病態に関わっていると考えられる。気分安定薬の共通する機構として、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の分泌を調節しているGAP-43のリン酸化が亢進していた。さらにリチウム慢性投与のラット大脳皮質でのイムノブロットによるGAP-43の定量では、リチウム投与5週後では55%と有意に増加していた。GAP-43のRNA量も蛋白量と同様に、4週後、5週後では蛋白量とほぼ同程度増加し、5週投与後では51%有意に増加していた。そこで、GAP-43の発現を調節している転写因子の同定をゲルシフトアッセイにて行った結果、bHLH(helix-loop-helix)転写調節因子であるMATH-2がGAP-43のプロモターのE-boxと結合しGAP-43の転写を調節していることが判明した。GAP-43発現変化をルシフェラーゼアッセイにて測定した結果、MATH-2転写因子は、他の転写因子と比較して、GAP-43発現を最も調節していた。実際にMATH-2遺伝子導入後、GAP-43蛋白レベルは約3倍増加していた。 また、リチウム5週投与後にMATH-2蛋白量は対照群の約4倍に有意に増加していた。リチウム長期投与後の免疫染色では、大脳皮質III層の外顆粒細胞層、海馬CA1〜CA3でMATH-2の増加が著明であった。特に海馬では対照群は、核内均一にMATH-2が染色されるのに対して、リチウム投与群では核小体、核膜にMATH-2の局在が変化していた。 MATH-2をαCaM Kinase II promoterとcis-TRE promoterを用いトランスジェニックマウスを作成した。オープンフィールド試験にて行動を観察した結果は、特に雄トランスジェニックマウスにおいて試験開始後10分後に行動が増加していた。ゼロメイズ試験にては雄トランスジェニックマウスにおいてopen armに出る時間が長く、closed armに存在する時間が減少していることが観察された。従って、MATH-2過剰発現したトランスジェニックマウスでは行動が過活動になり、さらに不安な刺激に対しては脱感作されやすいことが示された。 最後にリチウム長期投与後の大脳皮質を用い、プロテオミクス的解析を行った。Ion-trap型ESI-MSによる質量分析を施行し蛋白質を同定した。リチウム5週間投与後、リン酸化eEF2(elongation factor 2)が二次元電気泳動にて増加を認めた。イムノブロット法では、eEF2蛋白量は変化していなかったが、リン酸化eEF2抗体での検出ではリチウム5週間投与後増加していた。従ってeEF2のリン酸化のみが亢進していた。
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Research Products
(3 results)